くしゃりと髪をなでられて、嬉しい気持ちが体中を支配する。思わず顔を赤らめる。と同時に、底の方にじんわり広がって行く、物足りなさ。
 確かに、無条件に与えられる笑顔も、優しさも、心地よくはあるのだ。でも、いつからだろう。先輩の事を意識しだしたとたん、もっと別のものが欲しくなったのだ。
 頭におかれた腕を捕まえて、そっと顔を近づける。驚く先輩のまるい瞳の中の僕の顔は、滑稽なくらい真剣だ。

「孫兵…?」

「先輩、僕は、貴方が好きです」

(後輩、じゃなくて、恋人、になりたいのです。)
 

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