※殺伐注意
※グランが酷い






 吐息の音を間近で感じて、俺は渋々重い瞼を持ち上げる。夜の闇の中、蠢く影がひとつ。俺の体の上に馬乗りになって顔を覗き込んでいるそいつは、にこりと微笑んだ。
 どうやら毛布が剥ぎ取られたらしい。上半身だけひやりと肌寒い。それで徐々に覚醒してきて、俺の機嫌は急降下。ぐいっとその男・グランの胸を押す。

「おい、人様の部屋で何してんだ。早く帰れ。」

 グランは俺の腕を掴むと、いっそう笑みを深くした。
 奴は俺の口に唇を寄せてくる。寝起きで怠い俺の体はまるで鉛のようで、ろくな抵抗などできやしない。
 触れる僅かな柔らかさに、苛々が募ってきた。思いっきり眉根をよせて、声を吐き出す。

「一晩だけだって言ったろうが」

「うん、だからね、もう一晩。もう一度だけ」

 分かっちゃいない訳がないのに、奴は笑って流す気だ。
 お前が俺の向こうに何を透かし見てるか知っている。全く俺とは似ても似つかないあいつ。絶対に届くはずがない思いの丈を、俺に乗せてどうする気だ。結局なんにもならないだろうが。
 不毛な話だ。
 ばからしくなってきて、俺は抵抗をやめる。はあっと大袈裟に吐き出した息に、皮肉を乗せて。
 
「やっぱり君は優しいね。彼の方がもっと優しいけど」

 君のこと結構好きだよ、なんてつまらない言葉を寄越すだけなんて酷い奴だ。まあそんなもんだってのは分かってる。お前と俺の思いが釣り合うなんて、奇跡が起きても無理な話だ。俺の痛みなんてどうせ分かんねえだろうよ。
 でも一瞬だけ、あいつは後悔で染まった苦々しい顔をする。ざまあみろ。悪態をつくと、まだましな気分になる。こんなことやめて、さっさとフラれてこい。
 それまでの間だけだと知っていながら、仕方なく、俺はこいつと落ちて行く。きっと引き上げてくれる腕は、こいつの分しか存在しないってのに。
 再び重なる唇。静かに俺はグランの腕を首に腕を回す。





 ま、俺もお前のことは結構、好きだぜ。
 イイ思い出をありがとう、ってな。




Fall Out BoyのThnks fr th Mmrsって曲を聴いてたら指が勝手に動き出した。
グランひどいやつにしてごめんなさい。でもグラ←バン好きです。殺伐大好きです。
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