「へーすけくん、えいっ」
「わっ」

 金色が視界の端に乱入して来たかと思うと、いきなりタカ丸さんが久々知先輩に抱き着いた。視線の先で、背中にもたれ掛かるようにしながら、ぎゅっと強く抱き締めている。
 なに抱きついてんですか!瞬時に沸き上がる憤りに、俺の視界は鋭くなった。胸がちくちくと痛む。
 でも、先輩は嫌がってない。放せって言いながらも、抵抗は弱い。それに気を良くしたのか、タカ丸さんは艶やかな黒髪を手にとって、梳き始めた。愛しそうに、目を細めながら。
 
「あっ先輩たち何してるんですかー!」

 伊助だ。
 いいなあ、なんて不満げに頬を膨らます伊助に先輩は、苦笑しつつも両腕を開いて手招きをする。

「伊助、ほら」

 ふっと笑いながら、受け入れる先輩に、またちくりと胸が痛んだ。
 先輩は優しい。そして平等だ。
その腕も微笑みも、僕の方にだって開かれている。誰かひとりに甘くすることも、厳しくすることもしない。僕がねだれば仕方ないなって笑って、伊助にするのと同じように、頭を撫でてくれたり、ぎゅっと抱きしめてくれたりするのだろう。
でも、それがどうしても嫌だった。甘やかされたい訳じゃあない。でも、触れてほしい抱き締めてほしい。
 そう僕は、特別になりたい、のだ。先輩の隣に立っても恥ずかしくないくらい成長して、そして。
 
「三郎次」

 優しく名前を呼ばれ、逡巡する。暖かな腕はそれはもう魅力的で、しかし僕の中の何かが抵抗を始める。

「いいです、僕は」

ああ、素直になれない自分も、うじうじと悩んでいる自分も、それから、妬んでばかりの自分も嫌いだ。
 タカ丸先輩みたいに、素直になれればいいのに。
 でも、そんな自分を想像しようとしたけど無理だった。






タイトルが決まらなかった。
ろじくく増えてほしいのに!なんでこんなにマイナーなのでしょうか?
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