※殺伐こへ仙。こへ←仙気味。






「仙ちゃんは綺麗だなあ」

 そんな風に言うくせに、小平太の表情は平生と変わらない、笑顔。
 お世辞ではない。それは、小平太の性格から考えても明らかだ。至極楽しそうに発せられたそれは、純粋に褒め言葉。
 白磁の肌にも、艶やかな黒髪にも、それなりに自信はある。だが、その言葉は今、何の意味も為さない。
 がり、と音を立てて肩に勢いよく突き立てられた犬歯。走る激痛。ほんの少しだが声が漏れる。眉を潜める私を眺めて、小平太はにやりと笑う。 
 そこにはいつものような能天気な男の姿はない。ただ飢えた獣が、舌なめずりをしながら目の前の獲物を捕らえようとしているのみ。
 
「仙ちゃん、」

 間髪入れずに伸びてきた腕に、逆に安堵する。力を抜いて、受け入れる。




 



 言葉は要らない。突き刺さる愛の温度があれば、それでいい。



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