2.今すぐ起きろ、世界の朝だ!!


 朝、俺が目覚めると、いつものごとく目の前にあいつの寝顔があった。

 すやすやと、いかにも最上の幸せですといったようにふにゃりとした笑みを浮かべ、幸村は寝ていた。ちゃっかりと俺に腕を絡ませている。
 本当にこうして寝ていると、昨日俺に夜這いを仕掛けてきた奴とは思えねえ。
 まだまだあどけない寝顔に、思わずほほえましい気分になって、わしゃわしゃと幸村の頭をなでた。幸村はくすぐったそうにして、身じろぎをした。そしてまた満足そうにふにゃりとした笑みを浮かべてから布団の海に沈み込んだ。

 今何時だろう、と、何気なく時計を見る。七時二十八分。
 


 …何だって?

 やばい!!
 一時限は八時二十分からだから、そこまでに滑り込めば全く問題はない。

 まだ間に合う。俺一人ならば。

 隣で俺の気も知らないで幸せそうに寝息をたてている幸村が、憎らしい。
 そう、こいつは…こいつはとんでもなく寝起きが悪いのだ!
 一度寝たら自分から起きてくるまではどんなことをしても目を覚ますことはない。
 普段なら寝るのを早くさせているので全く問題はないのだが。

 昨日あんなことするからだバカ!

 とりあえず一縷の希望にすがり、起こそうとしてみる。

「幸村アアア!Get up early!」

 呼びかけてみる。
 応答、なし。

 揺すってみる。
 頬をつねってみる。鼻をつまんでみる。乗ってみる。叩いてみる。


 全然駄目だ。
 どうしよう。
 俺は、幸村の耳元でこう囁いてみた。

「幸村ぁ…起きねえとkissするぞ」

 …反応なし!

「うわあああ!」

 手で顔を覆って俺はベッドの上で悶えた。
 恥ずかしい。恥ずかしすぎる!
 こんなことを考えついてしまった自分も、やってしまった自分も痛い。
 そんなこんなでひとしきり悶えたあと、時計を見て、俺は遅刻するほかないことを悟った。




(何やってるんだ俺は!そして幸村、覚悟しとけよ!)


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