「あの…いい加減離して下さいませんか」

 少しばかり怒気を含んだ声で、後ろから覆いかぶさるようにして抱き締めてくる男に言い放つ。 

「何故だ」

 全く退く気配を見せぬ曹丕に、趙雲は困ったように視線を彷徨わせた。
 彼の右手が頭をしきりに撫でている。
 愛玩用の犬にでもなったような気分である。
 首筋に鼻先を埋めてくる感覚に、びくりと身を震わせる。あえてやっているのだろうが、かかる呼気がいやに熱っぽくて擽ったい。
 趙雲はいつもの通りのいやな予感に身を捩らせた。しかし、固く抱きとめているその腕はびくりともしない。

「っ放せ!」

 声を荒げて思い切り腕を振り切れば、腕の檻から右手が抜けた。

「煩い」

 しかし、振り上げた右の手首を掴まれて、いよいよ抵抗する術を失う。
 曹丕はなんのこともなく趙雲の必死の抵抗を押さえ込んでしまった。

「抵抗しても無駄だぞ」

 余裕な調子の曹丕は、にやりと口角を上げ、趙雲の耳に唇を寄せる。
 耳元で囁くその声に、絆される。



「お前は私の物だ」   






お題コンプが難しいのでこれだけ救済措置。
「俺様五題」より。
お題元:リライト(PC)
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