「なんかこうしてると、俺、作のものみたいだな」

 腰に縛り付けられた縄を摘まみ上げながら、三之助は嬉しそうな声でそんなことをいう。
 呆れた。
 この縄は、そういうためにつけてるんじゃねえんだけど。それから、なんでそんなに嬉しそうなんだお前。
 がさがさ、枝やら茂みやらをかき分けながら、先を急ぐ。こいつに付き合っていたら、日が暮れちまう。
 ぴん、と縄の突っ張る感触。一回振り返って、三之助を促す。

「馬鹿なこと考えてねぇでさっさと進め!」

 無意識のうちに立ち止まっていたらしい三之助は、顔を上げた。それからじっと俺をみつめてくる。

「…なんだよ」

 三之助の視線は強く真っ直ぐだ。何だか気恥ずかしくなってくる。
 それをごまかすように、そう問う。

「そーだ、」 
   
 何かが頭の中で完結した様子の三之助は、突然ぐいっと腰の縄を引っ張った。
 おもいきり縄を引かれて俺は前につんのめる。倒れ込んだ先に待ち構えていた三之助の胸の中に、すっぽりと俺の体は収まった。

「んで、これで作は俺のものな!」

「はあ!?」

 唐突すぎる話に、呆気に取られる。
 三之助は固まる俺の背中に腕を回して、ぎゅうと抱き寄せる。

「作兵衛いただきー」

 三之助は楽しそうにからから笑う。
 はあ、とため息ひとつ。ぐるりと三之助の胴に腕を回して、腹の辺りに顔をうずめる。

「これでおあいこな!」





(おまえは俺のもので俺はおまえのもの、手放す気はさらさらない!)





 
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