26.拗ねる(佐政)



「あ、旦那からメール」

 お喋りを遮るように、ピロリン、とポケットから軽快な音がした。ごめんね、と一言短く告げ、政宗からばっと視線を外して、携帯を開く。
 そういえば今日はお使いを頼んでいたんだった。タイムセールの魚は既に売り切れてしまっていたらしい。あーあ、晩ごはんどうしよう。返信画面を開きながら、そんなことを考える。
 携帯画面と向き合って返信文を打っていると、突如、視界が暗くなった。感じる指の冷たさに、手のひらが視界を遮ったのだと悟る。

「え、何?」

 そっと指を剥がして、訝しげに隣の政宗の表情を伺う。 
 何も言わず、拗ねたような表情で、視線をぷいと逸らす。構って、とでもいうように。
 うん、とりあえず、今日は家にあるもので何か作るとして、明日自分で買いに行こう。
 なかったものは良いから、頼んだものだけ買っといて。そう素早く打ち込んで、送信ボタンを押す。ぱちんと音を立てて携帯を閉じる。

「なに、拗ねてるの?」

「うっせぇ!」

 政宗の肩に右腕を回して、にやにやしながら顔を覗き込んだ。すぐにぷいっと顔をそらされてしまう。でもさ、その虚勢、ばればれだよ。
 さてさて、この可愛い恋人を、どうやって宥めてやろうか。
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