“スタートライン”
「ね、月島くん」
「何」
振りかえって話しかけた後ろの席の友人は、みじかく答えてこちらを見る。
「眼鏡とって」
「は?嫌ですけど」
「いーじゃんいーじゃん」
「何で僕が名字のためにそんなことしなきゃいけないわけ」
相変わらずつれない。
絶対かっこいいのにな。眼鏡だって似合うけど。
「コンタクトとかにしないの?」
「頭痛がするから」
「あー、ぽい。たいへんだね。」
「余計なお世話」
「ね、眼鏡とって?」
「……、しつこいんだけど」
悪態をつきながらも、月島くんが眼鏡のふちに手をかける。
え、いいの?やった。
わたしはおもわず身をのりだす。
月島くんが(とうとうその鉄壁の)眼鏡をはずして。
触れちゃいそうなくらい、近く。
…わたしの目のまえに、顔をよせてきた。
な、なに!?
これって…まさか!?
「…名字」
「えっ」「の顔がここでやっとわかるくらい。眼鏡とると」
「……、そ、そうなんだ。」
月島くんは眼鏡をかけて、何事もなかったかのように元の姿勢に。
「満足?」
「う、うん!ありがと!!けっこう目わるいんだね月島くんて」
わたしがやっとのことで返事をすると、
「あれ、どうかした?顔赤いけど」
彼はクールな顔をちょっとゆがめて、意地悪くわらってみせた。
「…わざとでしょ」
「さあ。何のこと?」
(やば、ちょっと意識しちゃったかも)
fin.
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