“切望”
飛雄と付き合うって聞いた時、なんの気まぐれだろうって思った。
でも彼女はほんとうにあいつのことが気に入っているみたいで。
俺には止める権利も口出しをする権利も一切ないって、わかってるから。
「次はいつ会えるの?」
尋ねながら、気怠げに横たわる彼女の頬を撫でる。
彼女はすこし目を細める。こうされるのが好きだ。
「うーん、多分いつでも」
「飛雄は?」
「バレーに夢中すぎる。最近特に」
そんなことだろうと思った。
付き合ってるはずなのに、俺の方が会ってるんじゃないかと思う。
「いいの。別に二人で遊びに行きたいから付き合ってるんじゃないし」
「まあ、そうだよね」
もともと一人が好きな子だ。友達とだってほとんど出かけたりしない。
でも、それって
「意味あるの?」
飛雄のカノジョでいる意味ってあるの?
会わない。何も与えられない。
だったら別れちゃえばいいのにさ。
ねえ、そうだねって言ってよ。
意味ないよねって、
もう別れるって、言って。
「あんまりないかも、しれないけど」
「ひとりを選ぶなら、今は飛雄かなって」
あーあ。
今日も敗北。
きみは決して俺のものにならない。
わかってるのに、いつもちょっとだけ、期待する。
きみがいつもの気怠さで、
もう別れちゃおうかなって呟く、
そんなシーンを期待する。愚かな俺。
fin.
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