tiny cakes/ on the shop



「だから、悪かったって」

必死に謝る俺をよそに、彼女は涼しい顔で歩き続ける。
もうどのくらいこうしているんだろう。
俺が途方に暮れて黙ると、その口がようやく開かれた。

「…それで?」
「えっ…それで、うん。もうしない、絶対」
「…むり。旭くんは優しいから、また同じことする。絶対」

今度は返す言葉がなくて黙る。
それについてはきっと彼女が正しいのだと思う。
怒らせるつもりも悲しませるつもりも、決してないのだけど。


「…あ。」

足をとめた彼女の目線の先には、ちいさなケーキショップ。
彼女の口元がようやくほころんだ。

「ケーキ買って?」
「うん、いいよもちろん」

これで機嫌がなおると、俺はようやく安心したのだった。が。



「ここからここまで、ぜんぶ。一つずつください」
「えっ」

店員の女性と俺は一瞬固まる。
彼女の顔をそっとのぞきこむと、笑顔だけど、目が笑ってなかった。

「…はい、それでお願いします。すみません」
「かしこまりました」


すべてのケーキを集めはじめる店員さん。
ああ困ったなと思って見ていると、彼女がちいさく笑い声を漏らした。




「ふふ…。ありがとう」



涼やかな笑い声と、
いつ見てもどきりとする、その笑顔。

俺は結局いつもやられっ放しだ。




(まあいいか)


仲直りのしるしにそっと手をつなぐ。




fin.






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