ゼロしいバレンタイン2014


 怒ったように頬を膨らませて近付いてくるしいなに、ゼロスは軽く身を引いた。
「な、なんだよ。俺さま、なんにもしてねーぞ?」
「…はい」
「あ?」
 しいなが差し出した包みに、ゼロスは間抜けな声を出した。
「黙って受け取りな」
「…なんだよ、これ」
「いいから黙って受け取れって言ってるだろ!」
 あまりの剣幕にゼロスは咄嗟に手を差し出す。しいなはそこに包みを置いた。
「あんたにやるよ」
 ゼロスは眉を寄せて包みを開く。そして中身を確認してからにんまりと笑った。
「…やっとおまえから出したな」
「…去年の花のお返しだよ。お礼。それだけだからね、他意はないよ!」
 念を押すしいなにゼロスは破顔した。嬉しくて堪らないように。
「ったくよ、おまえは礼のひとつも素直に出来ねーのかよ」
「…うるさいよ」
 しいなは唇を尖らせる。ゼロスは包みの中から一口大のひとつを口に含む。
「どうせならもっと甘ーいもんがよかったな」
「…あんたそんなにお子様口だったかい?」
「大人、だから言ってんだよ」
 しいなは首を傾げる。ゼロスは指を突き付けた。
「お・ま・え」
 一瞬呆けたあと、しいなの顔がみるみる赤くなる。嫌味を逆手に取ったゼロスに絶句してしまった。
「来年は期待してるぜ? 待てないなら来月に甘い甘ーい時間をお返し…いや今晩空いてるからこれからでも」
 ベラベラと調子よく喋るゼロスに、しいなの怒りがふつふつと沸いてくるのはいつものこと。
「この…色魔!」
「おっと」
「逃げるな!」
「逃げないぜ? だからおまえも逃げんなよ」
 再びしいなの頬が赤くなる。が。
「うるさい、殴るよ!」
「あだっ! だから殴ってから言うなって、おまえはよ…」
 まるでしいなから送られたチョコレートのように苦味のある関係は、蜜月にはまだまだ遠い。
 





 オチは常に行方不明\(^O^)/



 毎年恒例…というわけではなく、単に毎年書きたくなるんですね。ちなみに今年で三回目になるわけですが、時系列とか謎過ぎます。最初が世界再生の旅のときと考えると、ラタトスク関連での旅真っ只中になるのかしら…いやそんな感じでもないか、となるので、時系列は無視して下さい()

 ちなみに書き下ろしです←



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