怒ったように頬を膨らませて近付いてくるしいなに、ゼロスは軽く身を引いた。 「な、なんだよ。俺さま、なんにもしてねーぞ?」 「…はい」 「あ?」 しいなが差し出した包みに、ゼロスは間抜けな声を出した。 「黙って受け取りな」 「…なんだよ、これ」 「いいから黙って受け取れって言ってるだろ!」 あまりの剣幕にゼロスは咄嗟に手を差し出す。しいなはそこに包みを置いた。 「あんたにやるよ」 ゼロスは眉を寄せて包みを開く。そして中身を確認してからにんまりと笑った。 「…やっとおまえから出したな」 「…去年の花のお返しだよ。お礼。それだけだからね、他意はないよ!」 念を押すしいなにゼロスは破顔した。嬉しくて堪らないように。 「ったくよ、おまえは礼のひとつも素直に出来ねーのかよ」 「…うるさいよ」 しいなは唇を尖らせる。ゼロスは包みの中から一口大のひとつを口に含む。 「どうせならもっと甘ーいもんがよかったな」 「…あんたそんなにお子様口だったかい?」 「大人、だから言ってんだよ」 しいなは首を傾げる。ゼロスは指を突き付けた。 「お・ま・え」 一瞬呆けたあと、しいなの顔がみるみる赤くなる。嫌味を逆手に取ったゼロスに絶句してしまった。 「来年は期待してるぜ? 待てないなら来月に甘い甘ーい時間をお返し…いや今晩空いてるからこれからでも」 ベラベラと調子よく喋るゼロスに、しいなの怒りがふつふつと沸いてくるのはいつものこと。 「この…色魔!」 「おっと」 「逃げるな!」 「逃げないぜ? だからおまえも逃げんなよ」 再びしいなの頬が赤くなる。が。 「うるさい、殴るよ!」 「あだっ! だから殴ってから言うなって、おまえはよ…」 まるでしいなから送られたチョコレートのように苦味のある関係は、蜜月にはまだまだ遠い。 オチは常に行方不明\(^O^)/ 毎年恒例…というわけではなく、単に毎年書きたくなるんですね。ちなみに今年で三回目になるわけですが、時系列とか謎過ぎます。最初が世界再生の旅のときと考えると、ラタトスク関連での旅真っ只中になるのかしら…いやそんな感じでもないか、となるので、時系列は無視して下さい() ちなみに書き下ろしです← |