私は貴方を憎んでいた

貴方を軽蔑していた

貴方を恨んでいた



でもそれは、





始まりの痛み




私は貴方のような人が嫌いだった
嫌いで嫌いで貴方もきっと私を嫌いなはずなのにそれでも惹かれていた


果たしてそれは陥れるためにお互いが張り合った罠だったのか青臭い感情の一部だったのか私にはわからない



ただ私は貴方とのゲームに負けて離脱してしまったけれど
残された貴方が痛々しくて



前みたいに抱きしめる腕はなくて、


ああ元から壊れてしまっている関係なのに何を躊躇うのか何を悲しむのかわからないけれど



確かに貴方が呟いた


そう、私もただ、ただ



貴方を、











空虚な世界にぽつりと唯一人


神を蔑んだ罰なのか果たして数え切れない犠牲の報いなのか


もうなんでも良かった

自分を顧みる者は何もなく、一人、一人、一人



寂しいと口に出したくとも声は聴こえない



幾度後悔しても、あの退屈な日々には戻る気など更々なかった


どうして後悔など出来ようか


複雑で脆い関係
それでも惹かれていた

侮蔑の瞳を向けながら、それでも、たまに優しく笑ってはその華奢な腕が僕を抱き締めてくれた儚くて寂しいあの瞬間


こんな出逢い方でも君に逢えたことを後悔したくない

可笑しいんだ。君を失った頃から僕の世界は狂い始めた
可笑しいんだよ本当に


あの時ばかりが幸せでならなかった気がするんだ

確かに震える瞳で君は僕に呟いた



そう、僕もただ、ただ


君を、








「月くん。」

やっぱり君だけが空虚な世界に色をくれる



「おかえりなさい」


ただ、もう一度だけ貴方に名を呼んで欲しかった


「ただいま、L」







かえろう
(優しい君の声がするあの日に)








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