撫でたその指があまりに優しかったものだから驚いて見上げてみる
「たい…ちょう?」
ふ、と静かに笑って相も変わらず優しい指が髪と頬をくすぐった
「綺麗だ」
「っ、」
そんな口説き文句を急に言わなくたっていいのに。顔が熱くなる。どうしたらいいんだ俺は
「お前の色は生きる色だ」
「赤が、ですか?」
理解せずとも良い、と心地よく撫でる指が瞼を降ろさせた
頬から唇へと移るその指にそっとキスを落としてそのまま深い所へと意識をなくした
最後にうつった朽木隊長、白哉さんは幸せそうに微笑んでいた
大丈夫、アンタの温もりは忘れない
アンタのために残しておいた憎しみも、憧れも、羨望も、愛情も全部鮮やかなままだ
白と黒に彩どられた椿があかくなっても生きる色にはならなかった
けれど俺の赤ならアンタにわけてあげられたのに
悲しみ、なんて感情をアンタには持ちたくなかったのに
この感情に赤をのせて口移しであげれば良かったなんて今更
ぼとり、落ちてしまったのだ
逆さまに首ごとどうぞ
(それは突然、悲しい春を告げた)