その白い頚を絞めた。すると臨也は笑う。もっと、もっとちょうだい。そう臨也の口が動いた。空気は虚しく洩れて声にはならなかった。無様に足掻いて逃げようとするかと思った。臨也は最後の一線だけはいつだって越えないように逃げるから。けどどうやら俺の認識違いだったようだ。今、その頚を絞めきってしまったって臨也は笑ったまま死ぬだろう。あまつさえその頚と同じく真っ白な腕を俺の頚にまわして。最初、俺の頚も絞められるのかと思ったが優しくすがり付くように回しただけだった。まるで、こんな、…。やめよう。くだらねェ思考だ。ひゅう、と臨也の喉が鳴っていよいよ生命線ギリギリまで気道が絞まった。臨也はやめて、と無様に訴えない。ただ暗闇でもやけに映える赤い瞳を輝かして俺をみているだけただった。

俺は全く無意識の所でその頚にかけた手を弛めた。そのまま体を屈める。どうやら俺も何かの認識間違いがあったらしい。あの、臨也の、唇にキスをおとしていた。暫くはぼんやりとしていてわからなかった。驚くというよりはまるで自然な流れのようで困惑の方が強かったからかもしれない。臨也に至っては驚くどころか判りきっていましたという顔していた。やっぱコイツはムカつく奴だ。

頚にかけた手は弛めたため微かな呼吸が可能になった臨也は合わせた俺の唇から酸素も二酸化炭素も奪っていく。くらくらとめまいがした。ああこれが酸素不足によるめまいなのかとはじめての体の不調を思った。もしこのめまいが違う理由だったのなら、やはりこれも恐ろしいことだった。考えるのはやめた。あの臨也と唇を合わせた理由も。いつもみたいに逃げ切れなかった臨也をボコして最後に臨也にナイフを突き立てられてその隙に逃げる、そんな段取りも綺麗に狂って頚を絞めるだなんて酔狂な真似をしたことも。


はじまりは、なんだったか。考えるのをやめても臨也の唇の感触と熱が流れ込んできて思考が掻き乱される。いい加減本気で酸素不足に陥りはじめたため俺は唇を離した。物足りなそうにちろりと赤い舌を出した臨也はそのまま掠れた声でしずちゃぁん、と呼んだ。あぁそうだ。臨也が俺を呼ぶのが癪に障って、でも今日に限って違う奴と話をしてて、俺以外にも親しくその癪に障る猫撫で声で名を呼んでたから。だから頚を絞めた。コイツから俺を怒らすための俺にだけ、特別、なその声をきかなきゃ意味がない。俺以外じゃ意味がない。


―もっと、ちょうだい?…―


臨也が笑う。今まで何のために殺し合ってきたのか。臨也に向け最早何の意味をも成さなくなった言葉を吐く。「死ね」。それは唇を塞ぐ前に。



臨也はくすくすと笑って、やだなぁ、今さっき死にかけたじゃない、と言った。反論するのも面倒臭い。笑ったままの臨也は合わせた唇を受け入れて今度も声にならない空気を震わせた。しずちゃん、と。あの苛立ちは何処かへ消えた。あとはもう、戻れない道を振り返らずに進むだけだ。











end












******
こいつらって何してても幸せそうにみえるのは私だけ?










「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -