強く、揺るぎない背中を見る度思う

ああ、消えてしまう、と




「豪炎寺」
「鬼道?」



練習後の豪炎寺の体は汗の匂いと豪炎寺自身の匂いが混ざり合って俺の鼻孔をくすぐった。
熱い体温に溶けてしまいそうになる。抱きしめる俺の体と豪炎寺の体の境界線が曖昧になる。そうなってしまえばいいと思う


「どうしたんだ」


優しく諭すように背中を撫でる豪炎寺の手。その手が好きだ。そしていっそう力をこめて抱き締めた

「豪炎寺、好きだ」
「ああ。俺も鬼道が好きだ」


何度も繰り返した愛の言葉。おかしくなるくらい愛している



「お前はいつかどこかに行ってしまうんだ」
「行かない。ずっと鬼道の側に居るから」
「嘘だ!お前は消えてしまう」
「鬼道、大丈夫だ。居なくならないから。お前を置いていくことなんて、ない」
「う、そだ…」


ぽろぽろ落ちる涙を豪炎寺の指が掬う。お願いだから行かないでくれ。消えないでくれ。俺を置いてかないで


豪炎寺の大きな背中をフィールドでみるのが好きだった。任せられる背中。絶大な安心感。それと同時に不安にかられる。その背中はいつか俺の前から消えていくんだろうと。迎える別れの日の背中を見続けられることは出来ないのだろうなと



「何がそんなに心配なんだ」


ふわりふわりと優しく撫で付ける豪炎寺の指が流れる涙を掬う。あったかくて自然と涙が引いていく。


ほら、何が心配なのか言ってくれと指が優しく諭す。こんなに切ないのは計り知れないほど好きだからだ。




「お前と俺は一つじゃない」


そう、溢した。豪炎寺が一瞬だけ目を見開いた。けれどまた笑って俺の手を握った

「一つじゃないと鬼道は嫌なのか?」

嫌?嫌に決まっている。いつか居なくなる背中なんてみたくない。お前と一つになればそんな寂しい背中をみないで済む。お前のこの指先の温度に融けたらお前をなくさないで済む。切ない感情ごと豪炎寺に融ければこんなとりとめのない不安がなくなるのに。溶かされる指先を欲しいと願わなくなれるのに



「俺は少し低い鬼道の体温に触れていたい。鬼道の笑った顔をみたい。鬼道の肌に触れたい。鬼道にキスしたい。鬼道とサッカーがしたい。それは一つになったら出来なくなる」



そうだろ?と笑う豪炎寺が愛しくて愛しくて堪らなかった。触れた指先は溶けてはしまわないけれど。あたたかい温度を感じることかできる







「鬼道、サッカーしよう」



走り出した豪炎寺の背中を目掛けてボールを蹴る。その背中は自分と一つにはならない。けれど隣にあればいい。いつまでも隣にあればいい。



振り向いてナイスパス、と言った豪炎寺に笑う。この時間が続けばいい。終わる日はきっとこない。どうかどうか、いつまでも








そばに、いて







◇◇◇

鬼道さんはかわいいこ








「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -