遅刻の理由





「えっと…ごめん、佐野。」


「……いいけどね、所詮わたしの存在なんてそんなもんだろうし…」




たまに部活まで一緒に行こうと宍戸の教室に行ったら、神妙な顔した宍戸と、いつしか保健室で出会ったチビがいた。

なにこれ、どういう雰囲気なわけ?

声をかけようか躊躇っていると、チビの方が先に俺に気付いたようで小さく声をあげた。




「あ。」


「ん?ああ、向日じゃねーか。」


「よう、お前ら何やってんの?」




俺がそう問いかけると宍戸は気まずそうな顔をした。チビ(…確か名前は……ダメだ、忘れた)は「聞いてよ!」と宍戸を指差す。




「この人ってば、同じ氷の帝の中等部で過ごしたはずなのに『どこ中?』とか聞くんだよ!」


「え、お前氷帝いた?」


「!!」




思わず本音を言ってしまうと、チビは心底ショックな顔をして俯いてしまった。
一瞬泣いてんのかとも思ったけど、ブツブツ物騒な声が聞こえたからそれはナイ。




「あれ、留美ちゃんどうしたの?」




可愛い声が聞こえたので振り向けば、本当に可愛い女子がいた。

うわ、宍戸のクラスにこんな可愛い女子いんのかよ!マジずりーな。
あ、でも俺とあんまり身長変わんない……




「小西か、助けてくれよ。」


「コニー…わたしが信じられるのはコニーだけだよ…」


「えっ、急にどうしたの?」




小西と呼ばれた女子に宍戸が事情を説明する。マジ宍戸羨ましい、俺にも紹介してくんねぇかな。




「……ってわけなんだよ。」


「なるほどね。」


「ねっねっコニー!ひどいでしょ!」




なんとか擁護してもらおうと小西に迫るチビ……そうそう佐野だ、佐野。

だが小西は苦笑しながら言う。




「うーん、でも仕方ないんじゃないかな?留美ちゃん、中学時代身体弱くて保健室登校が多かったんでしょ?氷帝って生徒数多いし…」




確かに、それじゃわかるはずナイ。しかも身体弱くてとかぶっちゃけ嘘臭い。


宍戸は謝るのをやめ、佐野は更に落ち込んだ。

そして俺と宍戸は部活に遅れて怒られた。なんか理不尽。