冷却スプレー





昼休み終わりのギリギリに教室に戻ってきた佐野は何故か足を引きずっていた。




「どうしたんだよ、足いてぇのか?」


「保健だより、先生に頼まれてコピーとりにいったら、色んな人とぶつかっちゃって転んだ…。」




佐野は、思いっきり膝打った…と膝をさすりながら呟く。こいつチビだから視界に入らねぇ上に、ぶつかったらふっとんじまうんだろうなぁ。

そういやラケバの中に冷却スプレー残ってたよーな……。




「佐野、膝出せ。」


「ん。」




予想通り入っていたスプレーを見せながら言うと、佐野は素直にこちらに向き膝をつき出す。
距離をおいてノズルを押すと、可愛げのない声が上がった。




「ひ、ぎゃあ!冷たっ、冷たいよ!」


「当たりめぇだろ、アイシングなんだから。おらよ。」


「う゛ー、ありがと……。」




せっかく手当てしてやったのに、恨めしそうにお礼を言う佐野はやっぱり変わってると思う。

こういう面白ぇやつが中等部にいりゃよかったのに、なんて思ってしまう。




「なあ、佐野。お前どこ中?」


「は?」


「(可愛くねえ…)いや、お前外部入学だろ?」


「………わたし、中学も氷帝なんだけど…」


「………。」