油性のペン



『本日、お昼休みに委員会編成を行います。各委員会ごとに集合し、前期の活動計画を立ててください。』




なんて放送があったのが二時間目の休み時間。そういや先週のホームルームで委員会なんて決めたっけなあ。
俺何の委員会やったっけ。




「忍足くんっ、保健委員の集まりは第二理科室だって。」


「(保健委員やったんか、俺)おん、おおきに。半年間よろしゅうな。」


「う、うん!よろしく!」




あー顔真っ赤やん。この子確か松尾さんやったっけ。結構苦手なんやけどな〜…なんちゅーか馴れ馴れしい。

なんで一緒の委員会になってもうたんやろ。ま、しゃーないか。適当に仕事押し付けたればええか。


移動中もずっと話しかけてくる彼女の話を聞き流し、第二理科室に入る。
うわ、女子多いなあ。めんどい事になりそーやわぁ。




「それでは学年ごとにペアを作ってください。そのペアで担当の日は保健室の補助係をやってもらいます。」




委員長の言葉に色めく一年生、がっかりする先輩たち。

同じクラスの松尾さんは、さりげなく俺の腕を掴んで「ね、一緒にやろうよ」なんて上目遣い。せやからそーいうん勘弁してくれや…。


ふと周りを見ると、一年には俺ともう1人しか男がおらん。あ、あれ中2ん時クラス一緒やった小野やんか。あいつG組かー…ちゅーか隣の女子、随分コンパクトサイズやなぁ。身長150もないんとちゃう?

松尾さんの誘いをやんわり断り、小野のもとへ向かう。男同士組めば問題ないやろ。




「小野。」


「あ、忍足。相変わらずだな。」


「何がやねん、ちゅーかそれ絶対褒めてへんやろ。なあ、ペア組まへん?」


「わりぃ。俺今佐野と組んだとこでさ。」


「もう決めてもうたんか…しゃあない。」



諦めて適当な女子と組むか…松尾さん以外の。踵を返そうとすると、今まで黙って俺たちのやり取りを聞いとった女子ーー佐野と呼ばれていたおチビちゃんが口を開いた。




「あの、1人余るみたいだから3人で組めばいいんじゃない?」


「あれ、マジで?あー、留学生がいるからか。んじゃ3人で。いいよな、忍足。」


「俺は願ったり叶ったりやで。えっと佐野さん?」


「はい佐野です。」


「プッ、お前もうちょっと可愛い反応とかしてみろよ。忍足はこれでも氷帝人気ナンバー2だぞ?」


「あ、ナンバー1じゃないんだ?頑張れ。」


「マジウケる…!」




小野は机に伏して身体を震わせている。よっぽどおもろかったらしい。
一方笑われている佐野さんは、不満げな顔。




「もー小野くんムカつく。ムカつくからペア代表に決定。」


「えっ、ちょ、待てよーそんなめんどくせー役職俺やだよー!サッカー部のエースは忙しいんだからよー!!」


「知らん!」


「忍足何とかしろよ!氷帝ナンバー2の力を見せて見ろよ!!」


「あかんわあ、佐野さんもう油性ペンで小野の名前書きよったもん。」


「うっわ!マジかよ〜佐野の鬼!!」


「知らん!」




…あかん、俺も笑ってまいそうや。

なんとなく背後に感じる恨めしそうな視線は無視して、目の前のショートコントに俺も混ざったろ。

あー委員会、おもろくなりそ。