グレープ味の飴 朝練を終えて教室に戻ると、マスクをつけた佐野がいた。 そういや数学の教科書借りたんだっけ、返さねーとな。 「よう、佐野。」 「あ、おはよう。」 「これ昨日借りたヤツ、ありがとな。」 「いえいえーお役に立てたなら良かった。」 マスク越しにもごもご聞こえる佐野の声。俺が教科書を差し出すと、両手でそれを受け取った。その様子を確認して席に着く。 「具合もう大丈夫なのか?」 「あ、うん。熱もうないし。朝ちょっと喉痛かったから一応マスクしてきたんだけど。」 「そっか。」 「うん。」 言葉少なに会話を終わらせる。 女子って結構ベラベラ喋るもんだけど、佐野はなんつーかサバサバしてる感じだよな。話し方とかもぶっきらぼうだし、俺が言うのもなんだけど愛想がねえっつーか…。 斜め前の小西なんていつもニコニコしてて可愛い。そういや佐野と小西って仲良いよな。外部生同士だからか? 「留美ちゃん、昨日のノート見る?」 「コニーありがとー。結構進んだ?」 「ううん。英語が次のunitに入ったくらいだよ。」 「なら大丈夫か、英語はなんとかなる。」 「英語得意なの?」 「うーん、まあ5教科のなかでは。」 2人の会話を聞いていても、なんで仲良いのかはさっぱり。小西は声も可愛いな……っつーか俺なに聞き耳立ててんだろ。激ダサだぜ。 「あーマスクあつい。」 「取っちゃえば?飴あげるよ。」 「えっ!マジで!何味?」 「グレープといちごと…」 「グレープ!!」 「はい。」 「ありがとコニー!」 |