コンビニのあんまん


放課後の保健室。


保健の先生は出張で、この前委員会で決めた補助係の担当が今日。

まだ終わっとらんのかな、と思っとったら後ろから声がかかった。女の子にしたらちょっと低くて落ち着いた声。




「早いな、ナンバー2。」


「佐野さん、その呼び方はあかんやろ…」


「うそうそ、忍足くん。」




ハハハとあっけらかんに笑う佐野さん。こうやって立って向かい合うと身長差は歴然やな。


そういや小野の姿が見当たらん。佐野さんと同じクラスのはずやけど…。




「佐野さん、小野はどないしたん?」


「!そうだった、アイツねタイミングの王様だよ。委員会の担当日に部活で公欠とか!」




そういや跡部がそないなこと言っとったなあ。放課後にサッカー部の交流試合あるからテニスコートしか使えんって……。




「小野、サッカー部のエースや言うてたもんなあ。」


「自称じゃなかったんだね。」


「ほんなら今日は二人やね。」


「あ、別にいいよ。忍足くん部活でしょ。」




わたし今日部活ないし、テキトーにやっとくから行っていいよ。なんていう佐野さん。この子ほんまに俺に興味ないんやな、おもろいわ〜。




「ちゃんとやるで。委員会サボったらあかんし。」


「いっつもサボってそうなのにね。誰かに押し付けるの上手そう。」


(バレとる……)




その後無事に補助係は終わった。サッカー部の連中がよく来たが、佐野さんが小さい身体でテキパキと働いた。

俺?俺はやることなくてひたすら名簿書き。




「佐野さん、よう包帯とか薬の場所分かるなあ。」


「保健室はわたしの庭!なんちゃって。」


「あかん、佐野さんのキャラ掴めん…!」


「ハハハ。じゃお疲れ。わたしコンビニであんまん買って帰る。」


(佐野さん、ほんまに自由やなあ…)