アスラン/ナルニア国物語




ふわふわのたてがみに顔をうずめた。
大きく息を吸ったら、あったかいお日さまの匂い。
この大好きな温もりにはずっと触れてはいられないと思うと、鼻の奥がツンとする。
彼はこの世界の王で、一つの場所には留まらない。
それに彼が絶対の保護を約束するのはアダムの息子、そしてイヴの娘。
私はどちらにも該当しないから、だから何も言う権利なんてないし、だから。

どうして私じゃないんだろう、何故貴方が何よりも強い愛護をするのがルーシーなの?
わかってる、イヴの娘だからということよりもルーシーが純粋だから。
あの子は嫉妬なんてしなくて、人のことも信じることができるから、誰よりも貴ばれる。
嫉妬してばかりの私とは大違い。
自覚した瞬間、泣きたくなった。


「君は泣いてばかりだ」

「っ、まだ泣いて、なんか」


やせ我慢をしたところで、私が指摘された通りの状態だということは変えようがない事実。
じわじわ込み上げる涙を止める術を、私は知らない。
アスランのたてがみを私なんかの涙で濡らしちゃいけない。
ごめんなさい、目の辺りを擦りながら笑う。

あ、れ。
今ちゃんと笑えてる?
今にも決壊しそう、もうダメ。
なんでこんなに私は弱いの。


「何故私を頼ってはくれない」

「だっ、て。私はなんでもないから」


いつの間にかアスランは私たちのような姿になって、私の頭を撫でる。
やめてお願い優しくされたら、私はもう。
柔らかく微笑む彼がやけに眩しくて、ただ愛しかった。

促されるまま抱きしめられる、お日さまの匂いがグッと近くによった。

あったかい、涙腺の緩みを誘う。
大きく息を吸うと、頬に温かい水が伝った。


「わ、わたし、ね」


アスランのこと大好きなの、と続くはずだった言葉は、彼の口の中に吸い込まれた。
すぐに離された箇所をペロリと舐めながら、アスランは緩やかに微笑んで言った。


「このまま永久に君といれたらと望んで仕方がない」


どうしようもなく、逃げられないのだと悟った。
一番愛されているのはもしかしたら私かもしれない。



爪先一滴までの愛を




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