何かに目覚めそうです
京介さんが、だるいと言った。
風邪のようなだるさではなくて、披露からくるような、凝り固まった感じだと言った。
そして、私は今。

「〜〜〜〜ッ!!!」

声にならない悲鳴を上げる京介さんの上に乗っかっている。もっと言うと、京介さんの薄っぺらい腰を片手で掴んで、片方のお尻に肘を刺している。筋肉があるせいで一般的な女性よりは重い私の、全体重を乗せて。ぐいぐいと。

「ッ、っ、ってぇ、エルダ、痛ぇ!!!」
「身体が固まってるからです。はい、反対側やりますよ」
「は!?」
「は、じゃありません。何回も言ってますけど両方やらないと意味ないんです」
「だからって…っ、いでででででぇぇぇ!」

文句を垂れる京介さんに肘を刺す。ぐりぐり。情けない悲鳴が上がる。申し訳なくは思うけれど、いつも振り回されているのだから、これぐらいしたって、罰は当たらないだろう。
しばらくして肘を離すと、京介さんはぐったりと身体を弛緩させた。

「大丈夫ですか?」
「……いてぇ」
「まぁそうですよね」

腰や背中にも遠慮容赦なく肘を刺したし、そうしなくても拳に全体重をかけてぐいぐいと押したり擦ったりしたから相当痛かったはずだ。
弁解すると、私は何も京介さんをいじめていたわけではない。結果的に彼を痛めつける形になってしまっただけの話だ。

「身体はどうですか」
「……軽い」
「それはよかったです」

京介さんの答えを聞いてとりあえず安堵する。ぐったりしたままでもわかる程度の効果はあったらしい。よかった。
何の事はない。私は京介さんに整体を施していただけだ。肘を刺すとか拳をめり込ませるとか、結構酷い事はしたが、それも全部京介さんの身体をほぐすためだ。

「整体師の資格を取ってからあんまりやってなかったので、少し不安だったんですけど」
「…だからあんなに痛かったのか?」
「それは京介さんの身体が固まってるからです。さっきも言いましたけど」

そして今は同じような体勢を取り続けた私の身体が固まりつつある。手首、肘、肩と曲げ伸ばしをして状態確認。…まぁ、問題はなさそうだ。過信は禁物だけれど。

「また今度やりましょうか。身体がほぐれればそのうち痛みも軽くなりますよ」
「…ほぐれるまでは痛いのか?」
「そりゃ、まぁ、相応に」
「…頼みたいところだが、痛いのは嫌だ」

げんなりした表情の京介さんを見て、笑いそうになった。普段は冷静さと陽気さが混在したような態度を取るくせに、今はそんな様子が微塵もない。
だからだろうか。情けない悲鳴を上げていた時も思った事だけれど、―――面白い。それも物凄く。

「そう言われても加減はできませんよ。効果が半減してしまいますし」
「………」

努めていつもの声で言うと、金の視線を持ち上げた京介さんが私を睨んだ。でも覇気がない。可愛い。

「エルダ…楽しんでるだろ」
「何の事でしょう。あ、患者さんのデータ整理してきますね」

意外と、と言うと怒られそうだが、私の感情に対して敏感な京介さんにじっとりと咎められ、私は逃げるように部屋を出た。
面白がっていたのがバレた。という事はもしかしたら、あれもバレていたかもしれない。物凄く情けない悲鳴を上げる京介さんに、嗜虐心が煽られたの。とはいえ進んで痛めつけようとは思っていないから、京介さんも許してくれるだろう。
あれ、でも、また今度と言ってしまったという事は、進んで痛めつけようとしている事になるのだろうか。



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