デュエルとは何ぞや
「…で、この状況だとこの罠カードが有利に働く」

広げたカードの中の一枚を指し、鬼柳はエルダにそう説明した。ちらと金目を持ち上げると、エルダは患者のデータを見る時のような真剣な表情で説明を聞いている。
その様子を確認した鬼柳は指先を動かし、今度は一枚の速攻魔法を指した。

「そっちの速攻魔法でもいいが…ライディングデュエルだとスピード・スペルしか使えねぇからな。さっきの罠の方が確実だ」

そう言って指先を引っ込める。エルダは考え込むように顎に手をやり、「うーん」と首を傾げた。
数秒の沈黙を置いて、彼女はゆっくりと唇を開いた。

「どっちでも言える事ですけど、カウンター罠きたらアウトですよね」
「その時は他のカード…そうだな、例えばこれとかで対処するしかねぇ。満足な戦略とは言えねぇがな」
「………」

鬼柳の指したカードの名前を、エルダは不服そうになぞった。その様子を見た鬼柳は椅子の背もたれに行儀悪く背中を預け、微苦笑しながら肩を竦めた。

「仮の状況なんか、挙げればキリがねぇだろう」
「…状況としてありえる限り、念頭に置いておかないと駄目でしょう。下手に攻め込んだら負けるかもしれませんし」
「だが、攻めなきゃ勝てるものも勝てねぇぜ」
「それもわかっています。…難しいものですね。とりあえず、京介さんに教えてもらった事を参考にして組み直してみます」

はぁ、と溜息を吐き、エルダはカードを回収した。向きを揃え、机上を軽く叩くようにしてカードの束を整える。鬼柳は「あぁ、そうしろ」とぞんざいに頷きながら背もたれから身体を引き剥がし、エルダの頭をぽんぽんと撫でた。

「ちゃんと勉強し始めたのは最近だろ? 焦るなよ」
「…焦る事前提ですか」
「エルダは真面目だからな。釘刺しておかねぇと寝ずにデュエルの勉強とかしそうだ」
「………」

鬼柳としては半分ほど冗談交じりに言った事だったが、エルダには思うところがあるらしかった。微かに眉根を寄せ、ほんのりと赤みを帯びた顔を隠すように鬼柳の手を払いのける。図星か、と思いはすれど口にはせず、鬼柳はくつくつと喉の奥で笑った。



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