この頑固者め!
セイバー同士の刃が擦れる。コードがショートするような耳障りな音は、セイバーの音が光で構築されているせいだろう。などと考えている間に、足が繰り出されるのが見えた。
ぐいと身体を捻り、横っ飛びに蹴りを避ける。当然のように体勢は崩れ、それを見逃すはずもない相手は―――ゼロは、即座に体勢を戻した。このままだと追撃を喰らう、そう判断して私はバスターを数発発射した。狙いなどあったものではないが、それでいい。ゼロを牽制できれば。
…しかし認識が甘かった。私のバスターの威力が低い事を知っているゼロは、何の迷いもなくその弾を浴びながら私に突っ込んできたのだ。避ける間もなく、首を掴まれて床に引きずり倒された。揺れる視界が元通りになるより早く、眼前にセイバーが突きつけられる。

「…参りました」

セイバーとバスターを手放して、立っていれば諸手を挙げるようになっただろう姿勢をとる。ゼロは「あぁ」と素っ気無い返事をしてセイバーの刃を消し、私の上から退いた。その柄を定位置である左肩に納めるのを見ながら、上半身を起こす。

「しかし無茶するねぇ」
「何がだ?」
「バスターの弾に飛び込んできたでしょ。びっくりした」
「あぁ、あれか…ナナシのバスターは威力が低いからな」
「それにしてもさ、一応銃器っすよ。目に当たったらどうするの」
「その時は避けるさ。…だがそもそも、そんな弾道でもなかっただろう」

しれっと私の言葉を流すゼロは、きっと無茶をしたとさえ思っていないんだろう。悪びれた様子が微塵もない。…いや、こいつは例え無茶をしたという自覚があっても、こういう風に涼しい顔をしているのだろうが。

「…訓練だったし、私のバスターの事も知ってたからよかったようなものの…これが実戦で、相手がイレギュラーだったらどうするの?」
「イレギュラーごときに俺が後れを取るはずがないだろ。そこまで追い詰められる前に仕留める」
「そりゃあゼロならそれぐらいできましょうがー…」
「ならもういいだろう」

肩を竦めたゼロに腕を取られ、思いの外強い力で立たされる。無茶しいな性格はおろか、自分の力の強ささえ把握していないのか。とか思ったが、それはないはずだ。いつもはもう少し気遣ってくれる。なのに今日に限って何故。
心当たりはさっき私がぐだぐだと説教した事しかない。そして恐らくそれが原因なのだろう。ゼロはあまり気の長い方ではないから。しかも、これで私が勝っていれば多少は聞き分けてくれたかもしれないが、私はそりゃあもう見事なまでにゼロに負けたのだ。説教を聞かされたくはないだろう。
無茶ばかりするゼロが悪い―――と言ったところで、彼が聞き分けるとも思えない。そもそも無茶をしている自覚がないのだから。

「ゼロ」
「何だ。まだ何かあるのか」
「手短に済ませるよ。…私がゼロを心配してるんだって事はお忘れなきよう」

つん、とゼロの形の良い鼻を軽くつついて、反論させずに踵を返す。そろそろ次の人がこのトレーニングルームを使う時間だから、早く退室の手続きを済ませないといけない。
背後でゼロの溜息が聞こえた気がしたが、私はそれを聞かなかった事にした。
溜息を吐きたいのはこっちの方だ!




***


ナユタ様リクエストの「Xシリーズのゼロ夢」です。短めで申し訳ありません。シチュエーションはお任せとの事で、訓練中という事にしました。
ゼロというと無茶する印象が強烈です。あと他人からの評価では自分の価値観を変えない。彼の自信の表れなのでしょうが、その辺り上手く表現できているでしょうか。どきどき。
それではナユタ様、お祝いの言葉とリクエストありがとうございました。



×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -