私だって同じです
「好きだ」

唐突に言われて、はぁ、と間の抜けた声が零れた。真月君は涼しい顔して私を見つめている。

「急にどうしたの」
「好きだ、愛している」
「いや、だからどうしたの」
「君への想いを口にしているのだが、何か不都合が?」
「あ、いえ、特にないです」

反射的にそう答えたが、ぶっちゃけ不都合がないなんてお世辞であっても言えない。何せこの時の真月君はとても大人っぽくて、色っぽくて、そういうのに慣れていない私は照れてしまうのだ。

「そうか」

私の思いを知りもしない真月君は淡々と頷いて、それからまた、「愛している」とのたまった。嬉しいのは嬉しいが、それでもやはり照れる。というか恥ずかしい。
そしてふと思い出す。私は彼にここまで想いを告げた事があっただろうか。答えは否だ。告白したのは真月君からで、私はそれに応じただけで。いや、まぁ、私だって真月君の事は、その。そうだ、彼が私に向けるのと同じ感情を持っていて。だから言わなくてもいいとか思っていたが、よく考えればそんな事はない。あんまりにも言葉にしなければ、彼だって不安にもなるだろう。

「…ナナシ」
「うん」
「好き、だ」
「知ってる、その…私も大好き」
「ああ、知っている。素直にそれを言えない君が、たまらなく愛しい」
「うああああ…」

とんだカウンターだ。カウンターというとあのアリトとかいうバリアンが得意な戦術じゃなかったか。一気に血が上っていくのを感じて両手で顔を覆うと、真月君がくつくつと低く笑う声が聞こえた。

「ナナシは可愛いな」
「…真月君は私を狂死させるつもりなのかなぁ?」
「それもいいかもしれないな。その時はすぐに私も後を追おう」

こういった事をさらりとのたまってくれるせいで、私はいつもいつもいつもいつも恥ずかしい思いをさせられる。いや、まぁ、嬉しいのだが。とてもとても、嬉しいのだが。好きな人にここまで言われて嬉しくない人は多分いないはずだ。多分。

「…じゃ、じゃあ、死なない。大丈夫、真月君と、ちゃんと、生きる」
「そうしてくれ。さっきはああ言ったが、たった一瞬でも死んだ君を見るのは苦痛だ」

くすりと笑って、真月君は私をゆっくりと抱きしめた。さっきから早鐘を打つ私のそれとは対照的に、真月君の鼓動はいつもと同じ速度を保ったままだ。
こういう余裕たっぷりな態度を見せられると、自分が酷く子供っぽく思えてしまう。そりゃあ、バリアンとして生きてきた年月を考えれば、きっと真月君の方がずっと年上なんだろうけど。
適わないなぁ、と思いながら、私は真月君の背に腕を回した。




***


マリィ様リクエストの「夢主が大好きすぎる真月警部の甘夢」です。きっと夢主は「真月=バリアン」は知っていますが「ベクター」の存在は知らないと思います。多分。
真月警部はうっかりするとドルベと同じような口調になりそうでそこも怖い。頑張りました。
マリィ様、リクエストありがとうございました。



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