「ちきしょう、ついてねえな」
男はちっと舌打ちをして、乱暴に散らばる枯れ葉を蹴散らした。 青々と繁る木々から落ちたそれらは、ともすれば人生そのもののようだ。 どんなに全盛期を迎える者がいようとも、足元には確かに、腐れ堕ちた者達がいる。 高く澄んだ空さえも忌々しく思え、ただただ、男は地面を睨み付けながら歩いていた。
「昨日のポーカーで借金返済するつもりでいたのに、」 「絶対あれはイカサマだ、」 「余計に増やしやがって、」
つらつらと口を突く悪態はいつまでも止まることなく、それが男の唯一の気晴らしでもあった。
「ああ、苛々する」
いかにすれば自分は現状から逃れられるだろうか。 男はただ、そればかりを考えて森深くへと足を運んだ。
「…あら、」
女は気付く。 穴の外に、誰かがやって来たことに。
「…あ、」
男は気付く。 少し先に、穴があることに。
「そこのあなた」
女は声を張り上げた。 内心ほくそ笑みながら。
「…誰かいるのか?」
男は声に応えた。 女の真意に気付かないままに。
「ちょっと来てくださらない?」
そうして出会う、穴の中の女と穴の外の男。
穴の外の男
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