何てことでしょうか。
はてさて、わたしは大層困ってます。
あ、どうもはじめまして。
わたし、只今一人で内心えらいこっちゃになってる田鍋こえりといいます。
すきな食べ物は唐揚げと枝豆とキャベツです。
きらいな食べ物はピール漬けはちみつレモンです。
あまいのだめなんです。
すみません。
どうでもいいですか。
そうですか。
わたしもどうでもいいと思いましたよ、ええ。
今はそんなことどうでもいいんです。
何はともあれ、えらいこっちゃな感じです。
「みーこ、ねえねえ、みーこってば。」
どうしましょう。
わたしはみーこじゃないうえに、彼、ああ、彼は名雪誉くんといいます。
な ゆ き・ほ ま れ くんです。
とにかく、名雪くんに、何故だか頭を撫でられております。
撫でられて、というよりは、撫でつけられて、のほうが正しいと思います。
「みーこの髪、さらっさらだねえ。」
何だかものっそい花の咲くような満点笑顔ですが、とりあえずわたしはみーこじゃないので、どう対処したらいいんだかわかりかねてます。
えらいこっちゃ。
「…みーこ、オレの話聞いてる?」
…すみません。
全く聞いてなかったです。
えらいこっちゃな現状と必死で戦ってました。
「…あの、名雪くん。」
「やっぱり聞いてなーい!」
「えっ、あ、すみません。」
どうしましょう。
名雪くん、むくれました。
よりえらいこっちゃになったようです。
わたしは何かやらかしたんでしょうか。
どうしましょう。
あ、これだけうだうだいっといて何ですが、わたし、かなりのチキンです。
これだけ時間が経ってるにも関わらず。
というか、かれこれ一時間は頭を撫でつけられてたりするんですが、わたしが言葉を発したのは
『…あの、名雪くん。』
だけだったりします。
ありえませんね。
けど、とてもじゃないですがいえません。
名雪くんは、ものっそい人気者だったりします。
わたしはチキンなうえに人付き合いが苦手でピール漬けはちみつレモンも苦手なので、ただのいちクラスメイトにすぎません。
「…みーこって、人の目まっすぐ見て悩むんだね?」
えっ、すみません。
「…癖、で。すみません名雪くん。」
ふたことめがこれです。
ああ、またむくれてしまいました。
「…あのね、みーこ。」
わあっ、名雪くん、顔近すぎです。
近すぎですよっ。
「…誉って、呼んでっていってんの。」
おでこにおでこをこつんっとあてて、また、名雪くん…じゃなかった、誉くんが、花満開笑顔でそういいました。
「…ほ、まれ、くん?」
「うん。」
大変です。
心臓、ずきゅんと撃ち抜かれました。
よくわからないですが、またしても一人えらいこっちゃな感じです。
わたし、みーこじゃないですが。
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