act. 1



机上はオークションやショップで買った遊戯王カード達で占領される。

上級モンスターには【ブラック・マジシャン】と【サイレント・マジシャン】。中級、下級に【ブラック・マジシャン・ガール】と【魔導戦士 ブレイカー】を。そしてエースモンスターにしようと思ってる儀式カード【マジシャン・オブ・ブラックカオス】。儀式サポートカード、関連の魔法、罠を入れて。それとブラマジを出し易いように熟練の黒魔術師や魔法使いモンスターで固めて…………っと。よし! 

見繕ったカード達を入念にスリーブに入れて、モンスターと魔法罠を確認し一つの束にする。これで前々から望んでいた魔法使い族デッキが完成だ。
私は弾む気持ちで、出来たてのデッキからモンスターを引き出しデュエルディスクに擱いた。すると一枚のカードから白金の光を放たれ、勢い良く女の子が跳び出してきた。 転倒した私に騎乗してる彼女の正体は、デュエリストなら誰もが知ってるアイドルであった。


「きゃああ!申し訳ありません…! ……あれ?マスターに触れる…」
「貴女はブラック・マジシャン・ガールね」
「はい! この力は一体……」

至近距離で大きな眼を屡叩せてる。普段ビジョンにしかなれない彼女がこの状況に驚くのも無理はない。
私には
モンスターを実体化させる力がある。突拍子もない話だが偽言じゃない。私がディスクにカードを置くと、その絵柄枠からモンスター達が出現されるのだ。 だからドラゴンとか家で召喚したらもう大変。いやドラゴンは家じゃない所で召喚しても一大事なんだけどね。


「駄目だろうマナ。急に飛び出したりしては」

背後から低いトーンの声が掛ると、マナと呼ばれた彼女は迅速に私から退いた。振返った時点では何の影もなかった。だがその後にディスク上のカードから黒みを帯びた光が漏れ、すらりと高い背丈の男性が姿を顕現する。

「おおお、本物のブラック・マジシャンだ!」
「お初に御目に掛りますマスター。私を擁して頂けた事を光栄に思います。貴女様の様な決闘者様に対面するのは、未曾有の事象です」

そう言って私に恭しくお辞儀と挨拶をした。男前すぎてビビる。中身はマハードさんなのかな。

「相変わらず堅苦しいな。お前は」
「無礼者。聢とマスターに自己開示するんだ」
「効果とかならカードに書いてある。自分で話すのは手間だ」

出た、バーサーカー魂で一躍有名になった魔法導剣士。従順なブラマジとは対称的で毅然としてるなぁ。でも、自我をちゃんとを持っている感じで悪い気はしない。

続くように魔女が現れ芳しくサラリと長い銀髪を揺らす。先ほどとは比較ならない程静穏な登場だ。

「貴女はサイレントマジシャンだね」

首を縦に振り、帽子を脱いで深々と頭を垂れた。

「サイレントマジシャンは喋らないの?」
「話す時は喋られますよ」

ブラマジはそう云い、サイマジは肯定の頷きを見せる。その隣でガールが部屋をきょろきょろと見渡した。

「マスター、ご両親は? ご両親に立ち退く私達の姿を見られては拙いのでは?」
「いつも仕事で帰ってこないから大丈夫だよ。帰って来るときは連絡くれるし」
「では…マスターは、いつも家に一人で…?」
「うん。その時感じる寂しさが、この力を持った原因なんだ」

はは と緩く笑うと、ガールは腕を震わせて目を潤わせる。

「…っ…っ…マスター!私、望むのであればいつまでもお傍にいます!」
「ありがと、ガール」

また勢い良く密着する。 

この力を持ってからどんなモンスターも実体化してしまう。でも嫌とは思わない、温かみある肌が傍にあるとホッと出来るから。辛い時や悲しい時に話を聞いてくれるドラゴンや戦士達。私はそんな彼らとデュエルや日々を過ごすのが大好きなのだ。

今度はブラマジが周囲を見渡した。

「やはり、あの方の姿はないか……」
「? あの方?」
「ブラックカオスです。……彼奴はいつもこうなのです」

サイマジは片方しか見えない眉を顰めて浅ましい事の様に云った。ブラックカオスか………。ディスクにはしっかり配置してあるのに、如何して出てこないんだろう。

ん?

「いつも?」
「はい……。あのお方は、あまり馴れ合いを好んでいないらしいのです…」
「奴はデッキに入れられたら自分を魔力でデッキの一番下にしたり、デッキからこっそり抜け出したりする薄情者だ。今回は抜けてないという事は、それほど能力が強いという事か?面倒だな」
「口を慎め、ブレイカー」
「お前もいちいち煩わしい……」

ギロッと睨んで誡めるブラマジにブレイカーは耳に指を突っ込み舌を出す。

「ねえ、ブラックカオスってあっちの世界にいるの?」
「ええ。普段なら」
「連れて来てくれない?」

私が顔の前で合掌をし懇願をすると、ブラマジは喉を唸らせ腕を組む。

「しかし、あの方の扱いは難渋だと思われますよ」
「彼が特殊な結界を貼っていなかったら、探し出せると思います!」
「本当? じゃあ、是非お願い」



      * * *



「連れて参りましたー!」

数分後 彼らが部屋に戻って来た。一番後ろに居る黒髪の彼が、ブラックカオスだ。やはり一段と混沌のオーラがあった。ブラマジに彷彿すしてる眼はカッコイイというよりも綺麗系と云わせる。 

これでやっと役者が揃える事が出来た。共に闘い歩く仲間に私も自己紹介しなければ。咳払いをして私は彼らの前に立った。

「えーと 改めまして。私は名前ッ。これから貴方達の主人としてやっていくデュエリストです」
「宜しくお願いします名前ッさま!」
「お役に立てるよう善処させて頂きます」

ガールは外見通りの子で安心した。再び会釈をする他のメンバーと並んでブレイカーも今回はきちんと敬慕の意を見せてくれた。その概況に、私も熱誠を捧げようと立志する。そしてこのメンバー達で当分やって行けそうだと期待を募らせた。だがそれは、数秒後に崩壊する事となる。

「ブラックカオスも宜しくね。皆からもう聞いたかもだけど、私の下部に……」
「断る」
「え゙っ」

まさかエースモンスターに、第一声で拒否られるとは






  

人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -