No you No life


「…マスター?」

一人物寂しく名前の部屋で呟く男。

この時間帯に外出する傾向もなく大抵は部屋に居る名前。だが今日は不在の様子だ。
名前に会う為に訪れたブラック・マジシャンは肩をがくっと落とす。だが、出掛けたとは限らない。そう早々と気分を切り替えダイニングへと向かて行った。


しかし、残念ながら此処にも彼女の姿はなかった。

出掛けてしまったにしては戸締まりが完全ではない。本当に出掛けたのなら、こんな不用心に家を空けた事を帰宅時で注意をせねばと、ブラック・マジシャンは息をつき辺りを探索する。

「!?」

何気なく行かった台所で声を挙げた。ぐったりと、床に倒れ伏せている人がいたのだ。

その人物とはそう、名前であった。


「マスタ―!」
「うっ……ここは?」
「御無事ですか!?何故倒れて………」

抱き起こしながら半目の名前に問う。

「はっ そうだ。私、冷蔵庫にあったもの食べたら急に意識が…」

名前の手には倒れていても離していなかった食べかけのヨーグルトが。中身は床に飛び散り、容器だけしか残っていない。

それを名前から取り上げ、容器に印されている文字をマジシャンが読み上げた。


「…賞味期限すぎているではありませんか、だからいつも冷蔵庫の整備はしっかり行って下さいと助言しましたのに!」
「去年買った未開封ヨーグルトごときに負けるなんて、私もまだまだ甘い……」
「処分させて頂きます。あれもこれも」
「あぁっそんな、まだ食べれるよ。勿体ない」
「賞味期限半年以上切れてる時点で勿体ないとは言えません」
「せめてそのケフィ●だけでも…」
「いけません!」


作業妨害する名前を椅子に座らせるブラック・マジシャン。その姿は、まるで聞き分けが悪い娘と生真面目な父親だ。

「吐きそう」
「あんな物を口に為されば当然ですよ…」

これだからマスターを一人にさせられないと心の中で呟きながら冷蔵庫整理をする。
たった一週間修行をする為に主人の元を離れていただけでこうなれば、そう思うのも当然だろう。

「私、一つ気がついたの」
「何をでしょうか?」
「ブラマジがいないとね、生きていけない。って」

「……マスター……、それは生活的な意味ですよね」
「ちゃんと恋愛的な面もあるってば」


以上。
恋愛依存は人間を駄目にする という例であった。

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