ハイエナは餌付け禁止
チャラ男イービルブラック・マジックの呪文を唱える。戦慄で涙ぐむ獲物に混沌の法力が放たれ、相手のライフポイント諸とも無にした。
「勝者、名前!」
審判員のジャッジで会場が熱狂に包まれる。 ふっ 決まった。このデュエル最高に活躍したなー、俺。周りからの喝采がバイタリティーになるぜ。
沁み入ってる俺を置いて、我が主サマの名前はそそくさと身支度を始めた。(あ、因みにいつもならマスターと呼ばなければ怒鳴られる。面倒だから頭ん中では名前な)
「ああ〜……疲れた」
自宅に着いたとおもえば直ぐ布団にダイブ。布団に沈んでる名前を上から眺め、俺は咳ばらいをして言った。
(マスター、褒美はないんですか)
「褒美ぃ? ないよそんなの」
ちっ。『当然じゃん』みたいな顔で言ってやがる。あのなー、俺の方だってデュエルやら魔法使ったりやらすれば疲れるんだよ。お疲れ様、を語尾にハート添えて言って呉れてもいいんじゃねーの。
名前は足を交互にバタつかせ「ちょっと活躍しただけで何言ってるんだか」と口を尖らせた。ちょっとじゃねーだろ。物凄くの間違いだろ。
「あんたはハイエナ染みてるんだから、餌ぐらい自分で調達出来るでしょ?これからは自給自足の時代だよ」
(……このクs…、
要求してるのは餌ではなくですね………)
「ま、そのうちね」
そのうち、が生きてる間に訪れると思えないがな! なんか俺、何でこいつの元で下部してるかわかんなくなって来た。
「今日はもうお風呂入って寝ようかな。よっと……」
* * *
「イービル」
(ZZZzzz………)
「イービルってば」
(ん……?)
なんだよこんな夜中にお呼びだしか?………!!! まさか、この夜に褒美の授与が?そのまさかなのか!?それならば眠りに囚われてる場合じゃねぇ。カードから出てしかと貰い受かけねぇとな!
(っいて!)
表に出た瞬間に何かが俺の後頭部に当たった。床に落ちた音でわかる当たった物の重さ。なんだぁ?これは…………。
「はい。御褒美、魔術の呪文書」
(は?)
割りとマジで理解に苦しんだ。意味不明ってレベルじゃねー、何が嬉しくてこんなもん貰わなきゃなんねぇんだ。
(頼んでもいませんが)
「なんか頂戴っていったじゃん」
だからってこれはないだろ………。渋々拾い上げてみると重すぎで腕攣った。古臭い表紙を開いてページを捲ると夥しい文字が記されてただけだった。目が、目がああああうわーいらねええええええ。
「不満そうだね」
当たり前だろうが。お前は上司から褒美でタウンページ貰ったら喜ぶのかよ。
「じゃあ、何が欲しいの?」
(もう宜しいです。云ったって無駄なので)
「私があげれるものなら、あげるから。云ってみなよ」
名前は降参したように手を表に返し溜息ついた。
……云ったな。
ならば、名前が今直ぐ捧げられるもので、俺が1番欲しいものを貰う。
手も添えずに、名前の唇と自分のを張り合わせる。
(確かに頂きました)
茫然自失してる名前。徐々に顔面が紅潮していき、口角を上げてる俺の顔を映すほど目を見開いた。 ざまぁみろ。ハイエナを舐めてっとこうなるんだぜ。
「ほらまた調子に乗る!!」
(ちょry)
魔術の呪文書の角で殴られた。
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