涙を忘れる関係になりましょう


「生物は、感情が乱れると涙という水が出るらしい。何故感情だけで涙があふれるのか」

ブラックカオスは現れるや否や、珈琲を呑む私の前で生物学か哲学かの話をしだした。
涙が出る理由は私も良くはしらないけれど、世界では明かされている。
私達の世界よりいろんな技術があるデュエルモンスターズの世界ではそんな事、気にもかけないような事なのだろうに、どうしたんだろうブラックカオスは。

「名前、泣いてみろ」
「なんでよ」
「私は泣き方がわからない。殺したモンスターの涙を良く見るが」

茹でた麺をすくう如くさらっと酷い事を言う。そして遠い目をしていたブラックカオスは私に顔を向けグイと近づけてみせた。

「名前、泣いている姿を見せろ」
「何そのS発言」
「エス?磁石のエス弱のことか」

ブラックカオスは完全に理科系になっていた。

「どうしたら涙は出るのだ」
「え…」

その言葉に胸がきゅっと占められる感覚に、眉が強ばった。涙というのは自分に良い思い出がないゆえ、あまり考えたくない概念だ。


「えっと…、悲しい事があったりとか?」
「じゃあ、私が死んだら名前は涙くのか」

当たり前だよ。と言った私を見てふうーっと細いため息をついてブラックカオスはソファに腰掛けた。そしてふてぶてしく足を組むと、答えが出ないそれにイライラしてるようだった。

「ていうか動物共通だよ、涙が出るのはさ」

懐が寂しくなった私はソファの上にあるクッションを奪って胸に置き、口をうずめた。

「そんな液体は出たことない。そこらの種族と一緒にするな」
「ブラックカオスは人間だからでるよ」
「私は人間ではない、魔法使いだ」
「いやだから人間じゃん。モンスターで、魔法使いでも、人間がたで、人間じゃん」
「いいや、魔法使いだ」

私は彼の冷たい手を握りしめて顔の上まであげて、彼と私の手を合わせてみせた。

「ほら見て。手の形、体のつくり、一緒でしょ」

私の手はブラックカオスのに比べるととても小さかった。色も全く違う。

「見た目も大きさも違う。だけど、人間だね。
だから涙はでるよ。」
「さっきお前は私が死んだら泣く、と言ったな」
「うん。ブラックカオスは、私が死んでも悲しくない?泣かない?」
「ああ、泣かないだろう」
「そう…」
「悲しみさえしないだろう」
「え…」

彼が冷徹だと分かっていたが、私は心臓がズキンと痛んだ。これで涙が出そうになってしまうところをはを食いしばって引っ込めた。そんな最中にブラックカオスは、ソファで座って組んでいた脚をやめた。

「何を勘違いしてる?」
「え?」
「私はお前をしなせはさない」
「え!? い、いや無理でしょ不老不死なんて」
「黒魔導師が言っている。信じられないのか?」
「いや、だって」
「永遠に傍にいる相手に不服かあるとでも?」

眉をピクッと動かしたのは苛立ちの証し。それにおおのき、「そ、そんな訳ない」と言わされた。


「でもブラックカオスって案外子供っぽいんだね」
「なに?」
「相手が死んで悲しい思いをしたくないから不老不死を望む。って単刀直入な考えがさ」

そう言った私に、口止めのキスをされたのは言わずもがな。

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