2×airhead


「今日仕事休みだよね」
「ああ。それがどうした?」

視線を手元の月刊デュエルから前に佇む名前へと変えた。名前は、腕を後ろにして強請る目をしてる。

「出かけようよ」

やはり外出の催促か。そんな事だろうと思った。どうして名前はこうも外出を好むんだ。しかも行く場はいつもショッピングモールやらテーマパークといった人混み絶えない所ばかり。女は皆こうなのか?まあ、そうなんだろうと薄々思う。
俺は雑誌の頁を捲り「断る」の一言だけ投げる。彼女が向ける瞳の輝きが衰え始めたのを感ぜられた。

「何でよ。休みだからいいじゃん」
「休日は体を休める為にあるものだ。何故わざわざ出かけて体を疲労させなきゃならん」
「ぐ………」

論のバリアに言葉を淀ませ後退る。持論が通らないと悟った名前は背を向け憮然とする。折れない俺に、機嫌が傾いたんだろう。

「………バカ」
「何だと?」
「ドラガンのバーカ。もう知らない」

怒る理由が分からん。間違った考えを吐露したとは思わない。こいつの怒るツボは理解し難いに加えて、その所以をなかなか述べないから厄介だ。

「俺は、お前と此処で休みを満喫しようと思っていたんだがな」
「!」

背筋が電流を通されたようにピンと伸びた。そして、ゆっくりと振り向き訝しげに俺を見る。目元に浮かぶ赤は、期待してると同然だ。

「……だ、騙されないぞ」
「真偽はお前で見極めるんだな」
「…………………。 仕方ない。ドラガンを信じて、お家デートをしてあげる」

先程の暗澹とした機嫌を簡単に翻し俺の隣に座った。怒らせ易いが単純な分、扱い易かったりする。


「そういえば、バカと言った方がバカと良く言うよな」
「!……、其処までバカじゃないし」
「なら、これを解いてみろ」
「いいよ」

名前は尊大に俺の挑戦を買って出た。俺は雑誌の頁を進め、ある頁を開く。開いた雑誌を与えると直ぐに驚愕した。

「!? 何これ!」
「何って、詰めデュエルだ」
「いや それは分かるけど!」
「ライフは自分3000 相手1000。相手フィールドに表側表示永続トラップ【グラヴィティ・バインド‐超重力の網‐】と表側攻撃表示の【パーフェクト機械王】が3体。そして自分フィールドには【ジェイドナイト】【ビクトリー・バイパーXX03】【ファルシオンβ】【ブルーサンダーT45】【ロードブリティッシュ】が全て攻撃表示。手札には【サイバー・ドラゴン】【サイバー・エルタニン】、マジックカード【邪気退散】がある。1ターンで勝負に…」
「こんなの解けるわけないでしょ!」

慌てて雑誌を閉じる。最初の勝ち気はどうした、名前?

「ほらみろ、バカだった」

余りの滑稽さで笑う俺を睨む。

「ドラガンみたくデュエル上手くないの 私は」
「幾らなんでも諦めが速すぎる。そんなんじゃ、いつまで経っても上手くなれないうえにバカなままだぞ」
「バカバカって、彼女に失礼よバカ! 山男」
「山を侮辱するなバカ」
「山は別に侮辱してない。この山バカ。ビッグフッド」
「っ…おい……!」

綿ぎっしりのクッションでダイレクトアタックを食らわして来る。埃舞う中やめろと怒鳴り武器と成した物を奪いソファに置いた。やっと落ち着いたかと思うと、名前は再びクッションを手にして呟く。

「バカな私に好かれるドラガンは大バカー」
「もう勝手に言ってろ…」

笑止千万だ。低レベルな罵倒語を言い合って何になる。
諍いで床に落とされた雑誌を拾う。まったく、新刊だというのにもうこんな折れ目が…。無意識に溜め息を付きソファに背凭れると、隣から小声が聞こえた。

「……じゃあ 私が頭良くなったら、ドラガンはデレてくれるの?」

顔を向ければ、潰れるほどクッションを抱き締め身を固めている名前がいた。何泣きそうな面をしているんだか。

「賢くなったら他の男を好きになるだろ。ならそのままでいろ」

乱れた髪を付かんで俺の肩へと寄せる。また反論するかと思ったが、名前は抱いていたクッションを放り投げ胸元に飛び込んで来た。全力何だろうが俺には弱々しく感じる力に俺は拘束される。
俺も十分バカなんだ。辟易しても、こいつ手懐けていたいと思う辺りが。

「バカ………」

airhead:スラング用語/馬鹿、アホウ
詰めデュエルは遊戯王5D'sのDSゲーム、リバース・オブ・アルカディアにあったものです。

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