Our favorite girl


今日の授業を終えておやつの時間が少し過ぎた頃、リムジンに乗ったモクバにカフェへ行こうと誘われた。
モクバと放課後過ごすのはいいけど、あのヤクザ紛いの黒いリムジンで学校前を停車するの止めていただけないかな。

でもまあ彼のお気に入りカフェに行くのは好きだ。そこは私達には似合わない大人な雰囲気の場だけど、若者が自分等しか居ないから逆に落ち着く。
いつもの調子でモクバはチョコパフェを、私はアイスティーを頼んだ。


「そう言えば、瀬人って仕事頑張ってるみたいだね?」
「うん。最近はNY大会の管理で忙しいみたい。……って名前はもうそんな事知ってるか。昨日も電話したんだろ??」

ニヤニヤしながら言う。マセガキだな…。人の恋路ばかり探ってないで同じ年頃の子とデートとかしたらいいのに。

「NY大会の話は前したけど、そんな毎日電話してないよ。……ここの所はメールのやり取りだけ」

モクバは ふーん? と言って疑ってるけど、本当にそれだけ。あの人が忙しいのはわかってるから電話は自重してる。一流企業の社長としてニュースにも出る超スーパー高校生だからね。 寂しいけど、応援するって決めた以上は頑張れとしか私は言えない。



ぴろりーん


「え」

俯いてた顔をあげるとモクバが携帯を私に向けていた。カメラを私の顔の前に合わせてる。おいまさか。

「ちょ、ちょっと!今何撮ったの」
「そりゃ名前だよ」
「えええなんで」
「保存完了ー。兄様にそーしんっ」
「ぎゃー!」

キー打つのはえええ。携帯厨の小学生め。変な顔だったら嫌だって!しかも瀬人に送るなんて!瀬人にはプリクラさえ見せた事ないのに!
モクバから携帯を奪えずにいるとピロンと鳴って光った。どうやら返事のメールの様だ。


海馬から返信メール↓
No Title
ご苦労モクバ。
-END-



「(ご苦労って何だ)」

私もバックから携帯を取り出し、瀬人に電話する。コールが1回も鳴らない内に向こう側に繋がった。

「何だ」
「もしもし瀬人!」
「名前か。調子はどうだ」
「あ……うん。私は元気だよ」

久しぶりの好きな人の声だ……、なんか耳がこそばゆい。

「じゃなくて!今さっき、モクバからメール送られてきたでしょ」
「貴様のアホ面が添付されているやつか」
「消して!」
「ふん、安心しろ。もう保存した」
「なんで!?」

店員さんに店内ではお静かにお願いしますと注意されてしまった。しかも「今の声は何者だ。まさか俺がNYにいるのを見計らい、他の輩と会っているのか?その輩を粉砕してやる」とか言われる。ダークサイドに流れるやめろ。ただの店員さんだよ。

「俺が兄様に名前の写真を提供してるんだぜぃ!」
「あんたそんな事いつのまに……」
「つーか兄様がお願いしてきた」

なんだと…!

「今迄気がつかなかったのか。相変わらず鈍感娘だな」
「娘って…、私あんたと同い年だけど」
「寝顔の写真も送ってあるぜぃ!」
「そーゆーは盗撮って言うの!」
「今は貴様と会ってやれないからな。名前の顔を見れてなければ、仕事がに手がつかん」
「!」

―――――…び、びっくりした。
いつも私の前では罵ったり高笑いするだけなのに、

「そんな声も出せるんだね」
「俺も一人の人間を愛する男だ。貴様からの電話がないと惰弱にもなる」
「ご、ごめん。瀬人忙しそうだったから……」
「前々から言ってるだろう。電話はしたい時にしてこいと。留守電に繋がれるだろうが、後に此方から折り返す。名前が俺を思う気持ちを無駄にはしない」
「…ありがとう」

瀬人ってこんなに頼もしかったっけ。腕の力が抜けてうっかり携帯を落としそうになってしまった。赤まる顔をモクバに馬鹿にされながら、私は彼への気持ちが本物なのだと再確認した。


「先刻の写真、見栄えは最上を誇る。暫く待ち受けにしておいてやる」
「それはちょっと勘弁し……」
「切るぞ。これから業者と会議があるんでな」

プツン ツーツー…

「………モクバ、さっき撮った写真見せて」
「良いけど、消せないぜ? パス付けたから」
「どんな顔だったか酷く気になる」
「しょーがないなー」

片手でパカッと携帯を開き親指でキーを打つ。はい、これがさっき撮ったヤツ。とモクバから受け取った携帯画面には、さっき私がしてたであろう しょぼくれ顔があった。変な顔でも決め顔でもないけど、窓越しから指す光のフィルタが補正を掛けてるみたいだ。
……瀬人は、今この顔を待ち受けにしてるんだよね。な、なんかそう思うとまた顔が熱くなってくる。

「……ん?」

横キーを押してみると、また違う私の写真が映し出された。っていうかこれ…パンチラしてるんだけど!!

「ちょっとモクバ!」
「それは先週、強風だった日に撮影したやつだぜ!」
「うわ、うわ!他にも際どいのいっぱい!」
「ふふん。あれもそれも全部送信済み」
「裁判にかけるレベルだよ……」
「そんなネット流出してるわけじゃないんだからいーじゃん。兄様もちゃんと使ってるって言ってるし」
「えっ 何に」

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