私が可笑しな奴みたいじゃないか


埃っぽいガレージの中で私と遊星は煩瑣な作業に手をかける。 学校がテストで早帰りだったので暇を持て余すより、遊星を手伝うルートを私は選んだ。そんな訳だが、機械なんて普段触らないから余り役に立ててないのが現実である。

本当に遊星はDホイールとデュエルが好きなんだなぁ。目の下にブラックホール出来てもDホイールをいじるの止めないし、朝チュンになってもデッキ構築してたり。人はそれを廃人王と呼んだ。※呼びません


「名前、ドライバーを取ってくれ」
「はいはい。えーっとドライバードライバー」

ホイール用ツールボックスを漁ってみたけど、ドライバーは無かった。

「遊星、使ったら元の所に置かないと。
またなくしちゃうからね」
「すまない」


こういう所だけ、遊星はだらしないと言うかうっかりしてる。器具無くしたのもう何回目だ。持ちながらトイレやキッチンに行くものだから、大抵其所に放置されてたりするんだけど。
寝不足で物を何処かに置いてしまうのは分からなくもない。だが理解不能なのが、この間の 歯ブラシ立てに立てられていたマイナスドライバー。あれ本当に意味不明。

また歯ブラシの所に立たされてるかもしれないな。ちょっと見て来よう。

立ち上がろうとした時、ヒヤリと冷たい物が優しく掌に置かれた。

「ん……? あっドライバーだ!
ありがとう、探してた……………ん!?」




私の背後には、眼鏡をかけ口元がマフラーで覆われてる小人?とネジが背中に埋め込まれたハムスターが居た。この子達がこのドライバーを?

どちらも大きくくりっとした目で私を見上げる。なんじゃこりゃあ……か…可愛い。それにこの子達、見た事がある。

! もしかして、遊星が使ってた…!




「ゆゆゆゆゆゆゆゆうせい!」
「ちょっと待ってくれ、このコードだけ繋げたい」
「ほら、みて!」

やっと此方を見た遊星は私が抱き抱えてるこの子達に驚きもしない。今にも瞳を閉じそうな顔をしているだけ。

「……ジャンク・シンクロンとボルト・ヘッジホックか。それがどうかしたか?」
「違うって! ディスクに置いてないのに実体化してるよ。しかも触れるよ!」
「心配するな名前。
そういう幻は寝不足の時に良く見る」
「それ遊星が危ない!」

2匹は私の腕の元から離れ、遊星のDホイールへ歩み寄った。小さな歩幅が可愛さを醸し出す。 ジャンク・シンクロンはスパナを取りだし、ヘッジホックはネジを背中から抜き取った。 何やら2匹でやらかしてるぞ。 脅かさないようにゆっくりと近付き、作業の様子を伺った。

「わぁ…凄い!」

詳しくない私でも分かる、2匹の修復技術。パソコンで見たモーター図面が完璧に再現されていた。ぴょんぴょんと2匹は楽しそうに跳ね回る。

「見て遊星。この子達が……あれ」



遊星は、ソファの上でうつ伏せになり寝落ちしていた。全体的に力を失っている身体は屍の様だ。
……………まったく、徹夜習慣が付いちゃって昼間起きてられないんだな。

「ン?」

ジャンク・シンクロン達がまた動き始めたと思ったら、今度は椅子に掛けれていた毛布を引きずり始めた。
自分よりも大分大きい毛布を2匹協同で運び、それを屍遊星に掛けてあげた。 仕事を終えたと息をつき、そのまま遊星を見詰め始める2匹。


「…君たち、遊星が好きなんだね」

2匹とも即座に頷いた。

「そっか」

私は彼らの小さな頭を撫でた。

片手だけで覆う事ができる小さな機体でも、愛らしさが盛大に彼らから溢れていた。遊星この野郎、めちゃくちゃ幸福者じゃないの。羨ましいわ。

でも好かれる理由はわかる。遊星もこの子達の事、大切にしてるもの。どんなカードも使い熟しモンなスターとの間にはその間に絆を築いてしまう。並みのデュエリストには出来得ない、心からデュエルを好きでいないと。


そうして2匹は笑顔のまま消えていった。

一人前のデュエリストになれたら、私のモンスターも会いに来てくれるかな。もしそれが実現したら伝えたい。いつもありがとう、って。



* * *



「おはよう遊星。昨日ね、ジャンク・シンクロン達がDホイール直すの手伝ってくれたんだよ」
「何を言っているんだ?名前」
「ハ?」

こいつ……忘れてやがんな。

「一緒に見たでしょ!ジャンク・シンクロンとボルト・ヘッジホックが具現化してたの!!」
「名前はサイコデュエリストだったのか」
「いや違くてですね、ディスクにも置いてないのに具現化してたんだって」
「やはりお前はサイコデュエリストなんじゃないか?」
「違うって本当に!」

おいだからやめろ、憐れみの顔やめろ。
私が可笑しな奴みたいじゃないか!

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