Chapter 2


 大窓から射しこむ陽が、月光に曝された雪明りのように、そこを満たしていた。暖炉で燃え盛る炎の紅も、ふたつの椅子とその間の卓の蕩けるような木目も、向かい合って座る俺と少女も、鋭さを抜き取って真綿に嵌めこんだような陽光に塗り潰されている。砂糖菓子の盛られた皿の向こうで、卓に肘をつき、わずかに身を乗り出し、少女は頬杖をつきながらこちらを見つめている。猫のような蒼の目を縁取る長い睫毛は、艶やかに波打つ編み上げられた白銀の髪は、やわらかく漂う陽に透けて、氷が煌いているかのように見えた。 蜂蜜を混ぜた乳のような肌はすべらかで、熟れた林檎のような頬は、なるほど、この採鉱都市の者が姫と囁くに相応しく愛らしい。
 ふたつ年下の少女――今年で十六歳になるソーニャ・ヴェッターグレンは、珊瑚のような唇に可憐な微笑みをかたどらせ、甘えるような目に挑むような棘を潜ませた。

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