Chapter 2




 塩鉱都市ロダ――聖ヴェリカ教会。
 祭壇にて燃え融ける蜜蝋の灯に舐められて、礼拝堂はさざめき、ふたつの人影はゆらぐ。
「蓋は鎖されたままであったようだ」
 棺の眠る地下から祈りの壇へと帰還した騎士が、傍らの司祭を一瞥した。
「ひとしずくにすら、ベルンハルド・ヴェッターグレンは触れていない」
「私の知る限りでは、彼の御仁は理の末に蒼穹へ召されたと」
 穏やかに返す司祭に、騎士は嗤う。
「貴殿がそう申すのであれば、そのように信じようか。ロダの蜜月が崩れたのは、絡み縺れた意図が抽出した芳香の一滴ではなかったということを」
 黙したまま、司祭は瞼を落とした。
理の家を濡らす光は、煌きと翳りをもって、あまやかに沈んでいく。

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