Chapter 4


 翳りが生む冷ややかさは、やがて、雨粒が生む冷たさに取って代わった。落下する水滴が針葉樹の葉を叩き、細かな水の破片は透明な滴に呑まれながら地に落ちる。雨粒は、鋭いだけの落ち葉が折り重なる森の土を抉り、融けることのない粒子を孕みながら跳ね返り、薄い流れとなって地表を削った。
 歯を噛みしめてみると、知らぬ間に口腔に入っていたらしい土を噛み砕く。鼻腔を満たす潤みすぎた大気には土の匂いしかない。頬に貼りつく泥の感触も、身体を打ちすえてくる雨粒も、雨音も獣の鳴き声も、森のすべてがひどく遠い。だから、手に力を籠めてみた。結果は、泥と一緒に握りしめたはずの針のような枯れ葉がもたらした、ささやかなだけの、刺すような痛み。薄く瞼を持ち上げていることすら億劫になって、森に埋もれるように倒れこんだまま、鈍感という感覚に沈んでゆく。

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