Chapter 4
瞼が生み出す闇に、結晶のような雨粒の残像が跳ね踊る。やがてそれは炎が這い広がる様に転じ、舐めるように踊り狂いながら視界を埋め尽くす鮮烈な熱は、僕が逃れてきたものそのものになった。
まだ、灰儘になど帰するつもりはなかったから。
浅い眠りに浮いては沈む夢のように、記憶の中の事象は融解して混濁して原形を留めない。
眠りの淵に叩きこまれるような、無理矢理に意識を奪われるような、眠気と呼べるような優しいものではないものが僕を襲う。在るということを押し潰す、圧倒的なそれに溺れかけた時。
「生き延びたいか?」
声が、聞こえた。
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