Epilogue


 陽光に曝されてそれそのものが光を放っているかのような白亜の建造物の、開け放たれている回廊の始まりたる扉の上。蒼を仰ぐ青年の視界の片隅に漆黒の色彩がちらつき、葉を落とし水を芯に秘めた蔦這う白壁の手すりのようなその終わりにその色彩を纏う女が繊手を置いた。
 吹き上がる風が青年のプラチナブロンドを巻き上げ、青年に気づいていない女の緑髪を空へと散らす。風に遊ばれて舞い踊るやわらかな髪の隙間からわずかに瞠られた淡い藍の目が覗き、その唇がかすかに浮いた。突如現れた異質な色彩から眼を逸らすことのないままに、青年は身体を反転させ、蒼穹を背に佇む女を見上げる。
 誰かと話をしているのか、横からの凛とした立ち姿を青年に見せながら風に散る髪を片手で押さえていた女の蒼の目が不意に丸くなり、身体を反転させて両の手を白壁の上に置いた。女の緑髪を背後から煽った風が、青年のプラチナブロンドをその後方へと流し散らす。
 静寂が満ちる小さな邂逅。青年は淡く微笑し、女はその朱唇に弧を描かせる。
 肌にまろくはあっても細やかな氷が混ざっているかのようなささやかな棘を孕む大気と、どことなく斜陽の艶やかな昏さを含む陽の光。
 栄華の残滓、落日の黎明。
 輝かしい一瞬の勝利。
 それは閃光にも似た滅びの始まり。



[→ To be continued “TIERRA DE NADIE/The second act”]


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