Epilogue




 皇宮と呼ばれる場所の、正面から見ると柱と柱の上部をゆるい弧が繋ぎ、それが幾重にも重なって奥行きを増す白亜の回廊。その重厚にして清廉な道筋を皇宮の礼拝堂にて祈りの言葉を撒き終えたふたつの人影がゆったりと歩く。

「オルールク騎士団団長デルモッド・リアリ。あの男には、正直、やられてしまった」

 苦笑を零すのは、その表情をもってしてすらも神経質さの目立つ長衣の男。

「帝都包囲打開のため剣を取ることは、ファリアスという聖地を同じくし、また理の女神の婢たる同じヴァルーナ神教の信徒として当然のこと。同胞の受難に手を差し伸べない理由などどこにある、などとは。少なくとも、これで帝国国教会は帝都を救ったオルールク騎士団に手を出すことは困難になったわけだ。そんなことをしたら帝国全土から非難の声が上がる。まったく、なかなかの食わせ者だ」

 硬く響く足音に紛れる声音には苦笑と賞賛。傍らを歩くその男を、同じく長衣に身を包んだ小柄な青年が横目で見遣る。宵闇が結晶したかのような藍に澄んだ紫がゆらぐやわらかな眼差しが、軽く諸手を挙げる枢機卿長を捉え、更にやわらかくなる。
 ゆったりとした歩調での暫しの歓談の後、枢機卿長と別れた青年は、陽の光に眩く輝く白亜の回廊を抜け、外に出た。拓けた空間に大気が動き、燦然と降り注ぐ陽光に鋭さのやわらいだ風が青年を弄る。思わず仰いだ蒼穹には天空に透ける鮮烈な太陽。それは真昼の月のように白く、しかし確かな存在感をもって、その円形はゆるぎない蒼を透かしていた。
 どこか夕暮れの気配を孕む陽光が、艶やかな淡い翳りをもって世界を染め上げる。

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