Chapter 2




 ファウストゥス暦420年、ノヴェンベルの月の第30日。
 帝国西部ブランデンブルク辺境伯領領都――海運都市ウェルラミウムにて、ひとりの司祭に先導された領民が領主邸を襲撃した。火を放たれた厳冬の大気に佇む領主邸は当然のごとく炎上、領主邸に逗留している委任統治者イルクリー伯爵は死亡。後、混乱した都市を纏め上げたウェルラミウム海運商会連合代表ハンスユルゲン・ザリエルが市長として立ち、自由都市となることを宣言。女帝はそれを承認。これによりウェルラミウムの主権はブランデンブルク辺境伯の手より離れた。
 ブランデンブルク辺境伯領領都にて生じた聖ルス教会の聴罪司祭フェルナンド・ラダルを指導者とするこの出来事は、それが生じた都市の名を冠しウェルラミウムの蜂起と呼ばれる。

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