Chapter 1
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ファウストゥス暦422年――初夏。
この時、帝国史においてさして珍しくもない皇帝暗殺未遂事件が起きた。
内務卿フローレンス・キャンティロンによって起こされたこの事件は、一族の粛清という血の嵐を巻き起こし、いくつか、これより帝国が経験するものごとの種を蒔いた。
キャンティロン一族の粛清。それによる近衛軍――ひいては女帝の勢力の拡大。隣国アレスの王位争い。それによる東方小国群の緊迫化。帝国の混乱。それによる異民族の活性化。
そして、もうひとつ。
それは。
反皇帝を掲げる有力諸侯の動きの表面化。
これより、帝国は激動と呼ばれる時代に突入する。
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