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エンティティが新しく殺人鬼を連れて来たらしい。確か名前はゴースト、ゴーストフェイス。エンティティが飽きないように次から次へと仕入れられる生存者と殺人鬼。抵抗するのも諦めた私はただ儀式を繰り返す。どうせこの霧の世界からは逃げられないのだから、私は今日も従順なエンティティのおもちゃだ。

もう何度目かも忘れてしまった儀式が始まる。発電機を修理して脱出する。そんなのわかりきっている。だけど従順なおもちゃでもたまには新鮮味が欲しい。私は新しく手に入れた花柄のワンピースに身を包み、発電機を探す。仲間から可愛いねと褒められたワンピースだ。今日の私は浮き足立っている。


一人で発電機を修理していると、木の陰からこちらを覗く白いマスクと目が合った。マイケルかと思ったが違う。もしかして、彼がエンティティが新しく連れてきた殺人鬼なのだろうか。木から顔だけ覗かせて私を凝視している。今までのキラーとは違う動きに戸惑ってしまう。困惑している私にゴーストフェイスは木から体を出しヒラヒラと手を振りながらこちらへゆっくりと歩み寄ってきた。


「やあ名前。ホラー映画は好きかい?」

「…えっと、苦手かな」


相手の動きがわからない。どういう風に動き、どういう能力を持っているのか。下手に動けないがこの場から早く逃げた方がいいのはわかっている。私は些か慎重すぎる部分がある。エンティティの従順なおもちゃでもやっぱり痛い思いはしたくないし、生きて脱出したい。サク、と草を踏むゴーストフェイスのブーツを見て彼のマスクに視線を向け直す。


「苦手だって?全然観ないのか?」

「全然って訳じゃないけど。たまに友人と観たり」

「最後に観たホラー映画は?」

「…スクリーム」


嘘をついても仕方がないので正直に答えるとゴーストフェイスが「俺じゃん!」と歓喜の声を上げた。彼の急な大声に驚いて思わず尻餅をついてしまった。ああ、ワンピースが汚れてしまう。慌て腰を上げようとしたが目の前のゴーストフェイスが硬直しているのを見て首を傾げる。


「…何?」


声をかけるとゴーストフェイスはビクリと肩を揺らし前屈みになってしまった。一体どうしてしまったのだろうか。


「ちょっと、なに?何してるの?」

「は、あ、いや」

「…お腹痛いの?」


腰を上げてゴーストフェイスに近寄り、つい仲間にする時のように彼の背中を摩る。「おい!やめろ!」とゴーストフェイスが怒鳴るが、私としては万全の状態で儀式に臨んで欲しいと思っているのだ。彼の制止の声も聞かずに、なんだかワガママな弟みたいに思えてきたゴーストフェイスのお腹に手を伸ばす。


「…?」


ぐにゅ、と何かに手が触れる。硬い、棒のようなもの。何だろうとぎゅっと握るとゴーストフェイスが情けない声を出して私の手を握った。まさか、とは思ったがそのまさかかもしれない。


「な、なんで勃ってるの!」

「なんでだと?名前が悪いんだぞ!」

「悪くない!」

「…パ、パンツが見えてんだよ」

「は、」


パ ン ツ 。

さっき尻餅をついた時だろうか。確かにワンピースの丈は、短い。いやいや、パンツくらいでそんな。そんな馬鹿な。


「パンツくらいで…」

「は?!お前恥ずかしくないのかよ!」

「別に…」

「これだからビッチは!恥じらいってもんがねえ!奥ゆかしい大和撫子はどこいった!」

「なんかごめん。それより、その、それは大丈夫なの?」


ゴーストフェイスのまだ元気な股間を指差しながら聞くと、彼は少し黙って「だ、大丈夫じゃねーよ」と小声で言った。


「…俺さ、名前の事いいなって思ってたんだ」

「え?いきなり?」

「でもって俺は殺人鬼だし、今から名前を犯してもなんも問題ないよな」


勃起しながら言うか?まあ、こんな短い丈のワンピースを着てきた私にも非はあるだろう。お詫びに私が慰めてやるか…なんてなるか!


「マイケルになら犯されてもいいってちょっと思うけど」

「…おい!なんでそこでマイケル・マイヤーズが出てくるんだよ!」

「だって彼、セクシーだし」

「俺はセクシーじゃないって?!」

「どっちかって言ったら…キュート?」

「キュートな俺に犯されるのは嫌か?」

「というかセックスは恋人としたいし、そもそも今は儀式の最中だしそういう問題じゃない」


「確かに…」とゴーストフェイスを丸め込む事に成功し、発電機の修理を再開しようと彼に背を向けようとしたが手首を強く握りしめられて思わず後ろに蹌踉めく。まだ何かあるのか、といつのまにか股間の冷静さを取り戻したゴーストフェイスを睨み付ける。


「じゃあ俺と名前が恋人同士になって、儀式じゃなくプライベートで俺と会えばいい」

「そんなのエンティティが許す訳ないでしょ」


ゴーストフェイスはまだこの世界の事をあまり理解していないのかもしれない。彼の手を振り解き発電機の修理を再開する。キラーと恋人同士だって?馬鹿馬鹿しい。そんなの絶対あり得ない。面白いジョークとして受け取っておこう。

後ろを振り向くとゴーストフェイスの姿は無かった。



あの儀式から数日が経った。あれからゴーストフェイスとは儀式でよく会うが、あの日のように話したりはしていない。ただいつものように淡々とこの日常が過ぎていくだけだ。キラーに吊るされエンティティへの生贄になる。たまに運良く生き延びる。

焚き火を囲み談笑している皆の側から離れて1人、テントの中で寝転がる。あの日のゴーストフェイスとの会話が頭から離れなくて、ずっとモヤモヤしている。ため息を吐くとテントの外でガサリと草が揺れた。仲間達だろうかとそのまま特に気にせず寝転がっていると、「やあ名前」とボイスチェンジャー越しの声が聞こえ「は?」と思わず間抜けな声が出てしまった。ゴーストフェイスが何食わぬ様子でテントの中へ入ってきたのだ。


「え、いや…何してるの?」

「何ってプライベートで会いにきたに決まっているだろう」

「本当に何してるの?」

「本当はもっと早く会いに来てあげたかったんだが中々タイミングが合わなくてな…それにしてもその部屋着はちょっと…セクシーすぎるんじゃないか?」

「は?」


勝手にテントの中に入ってきてペラペラ喋って、私の足を凝視するゴーストフェイス。セクシーと言われても、このまま寝るつもりだったしただのキャミソールにただの緩いショートパンツだ。ゴーストフェイスって耐性ないよね。なんて言ったら怒りそうだからやめておこう。


「えっと、とりあえずココアでも飲む?」

「え!いいの!」


思いの外、ココアに喜んでくれて思わず笑いそうになる。「飲んだら帰ってね」と腰を上げてテントを出て行こうとすると、ゴーストフェイスに勢いよく手を掴まれてしまいその反動で彼が座る股の上に尻餅をつく。私は何回ゴーストフェイスの前で尻餅をつくんだ。


「ちょっと、何するの!ココア欲しいんでしょ」

「いや、名前の手作りココアは欲しいけどその格好で外に出るつもりか?」

「そうだけど、だって焚き火でお湯温めないと…」

「駄目!俺以外のやつのそんな格好見せるな」

「は、はあ…」


そんなにセクシーなのかこの格好は。着替えるつもりも上着を羽織るつもりもない私は、色々面倒臭くなりそのままゴーストフェイスの胸にもたれ掛かると「名前…」と後ろから抱き締められる。もう、いいんだ。多分こいつは満足するまでこのテントから出ていかないだろうし、今はこの童貞の好きなようにさせよう。まあ、こんなところ仲間に見られたらやばいんだけど。

ゴーストフェイスの手が胸に当たり擽ったさで声を上げると、彼は慌てて手を上げてまたゆっくりと気をつけるように私を抱き締めた。「ご、ごめん」と戸惑ったように謝わられて思わず笑ってしまう。


「…何笑ってんだよ」

「あはは、ごめん!反応が面白くて」

「…うるせえ」

「別にこんな粗末な胸でもいいんならいくらでも触っていいんだよ」


キャミソールの胸元を引っ張り谷間を見せつけると、ゴーストフェイスは案の定ピシリと硬直して私の胸元に釘付けになっている。彼の胸板に背中を擦り寄せて、熱く硬いものが当たっているお尻を控え目に動かす。だってゴーストフェイスの反応がいちいち面白くて可愛いんだもの。虐めたくもなっちゃうよね。


「…あっ、名前…やめ、っ」


ゴーストフェイスは情けない声を出しながら私をきつく抱き締める。どうしよう、なんだか変な気分になってしまった。グリグリと彼の股の上で腰を揺らしていると、いつのまにか胸に伸びていた彼の手がゆっくりと動き始め慣れない手つきで私の胸を揉み始めた。


「んっ、はあ…ぁ、ゴーストフェイス…」

「名前…っあ、好き…っはあ」


ゴーストフェイスの腰が動き出し、私の中へ入って来ようとしている。ブラジャーを着けていなかったため、難なく私の頂きを探り当てたゴーストフェイスはそれをキュッと摘んだ。その刺激に、腰を浮かせて声を上げてしまう。彼の一物がまた大きくなった気がした。


遠くからキングの馬鹿でかい笑い声が聞こえハッと我に返り、ゴーストフェイスの盛り立ったソレに、思わず、折れてしまいそうなくらい、体重をかけてしまった。


「いたいいたいいたい!俺のエクスカリバーが折れる!死ぬ!」

「あ、ごめん…」

「えっ、なんで?なんでいきなり殺そうとしてくんの?間違いなく今からヤるぞ!って感じだっただろ」

「いや…なんとなく…」

「なんとなく?!」


多分、この世界に来てからそういう事とは無縁の生活を送ってきたからだ。久しぶりに求められ、少し盛り上がってしまっただけだ。エクスカリバーを抑え泣きそうな声になっているゴーストフェイスから離れ、体を横にする。そうだ寝よう。これは夢だ。


「よし!明日から儀式頑張るぞ!おやすみ!」


生殺しだ、と悲痛な叫びが聞こえたが知らない。私は殺人鬼と間違いを犯すつもりはない。犯しそうだったけど。

でも、まあ…たまに、少しくらいなら。私を抱き締めてきたゴーストフェイスのマスクをずらし、触れるだけのキスをする。また彼のエクスカリバーが元気を取り戻したが、気にせずに目を閉じた。


20190531
よくわからなくなったけどゴスフェ参戦おめでとう!


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