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「何アンタ。残業とかサバイバーに煽られた挙句全逃げされた俺への当て付けかよ」

「…フ、フランク」

「へえ。俺の名前知ってんだ?わー嬉しいよろしくねー。…悪いけど俺今最っ高に機嫌悪いんだよね」

「出る前に、フランクに挨拶したくて」


思わず硬直してしまう。今回のサバイバーはどれだけ俺を馬鹿にすれば気がすむんだ。くそったれ。そもそも1人に粘着して発電機のチェックを疎かにした俺のミスだ。わかってるさ。だけど腹が立つものは仕方ない。目の前のオドオドした女をマスクの下から睨みつけながら、どうにか殺せないか考えるが女の背後にはすでに解放済みのゲートがありナイフを仕舞う。


「アイサツ?何?俺超ナメられてね?」

「ち、違うの。ただ純粋に、フランクとの儀式が終わるのが寂しくて…えっと、ごめん」

「…気持ちわりいな」

「うん、よく言われる」


女はそう言って口元に手を当てて小さく笑った。その仕草があまりにも上品で、ああ甘やかされて育てられた良いとこのお嬢様かと鼻で笑う。強ち間違っていないだろう。服装もどこかオジョーサマっぽいし。

溜め息をついてロッカーにもたれ掛かる。


「ねえ、フランク。私名前って言うの」

「へーそう」

「私リージョンの事色々調べたんだ」

「…あっそ。で?なにか収穫はあった?」


俺の質問に名前は頬を染めて嬉しそうに微笑んで言った。


「あったよ」

「あったんだ」

「フランクがかっこいいなって」

「…馬鹿じゃねーの」

「それもよく言われる」


名前はまた上品に笑った。ああ、なんかこいつと話していると調子が狂う。また溜め息をつくと、さっきまで笑っていた名前が泣きそうな顔で俯いていた。何だこいつ。情緒不安定すぎる。


「でも、フランクってジュリーと付き合ってるんだよね?」

「…まあ」


泣きそうだった顔がさらに泣きそうになって目に涙が溜まっている。俺に惚れてんの、こいつ。

そういえば今回の儀式で名前が煽ってきた事は、無かったな。


「…アンタはなんでここに連れてこられたの」


今にも溢れ落ちそうな涙を見ながら話題を変える。どこかでエンティティの不機嫌そうな声が聞こえた気がしたが、きっとサバイバーと仲良く雑談している事に不満があるのだろう。

俺の質問に名前はパッと笑顔になって、涙を拭いながら嬉しそうに話し始めた。俺の言葉に一喜一憂して、殺人鬼の俺に恋して、こいつ一体なんなんだ。変なやつ。


「私、親に無理矢理お見合いさせられてその相手と結婚する事も決まってたの。ある日、好きでもない人と結婚なんて嫌だー!って思って生まれて初めて親に反抗して家出してね…気付いたらここにいたんだ。ちなみに今回が初めての儀式。同じサバイバーの方達が色々教えてくれてフランクを知ったの。それから気になってたくさん調べたんだよ」

「へえ…よく喋るね、アンタ」

「お喋り大好きなの。でもエンティティには感謝してるかな。フランクに出会えたし」

「よくそんなくっさい事言えるな」

「フランクの事好きだから恥ずかしくないよ。でも失恋しちゃったけどね、ふふ」


強がって笑ってるけどまた泣きそうになってんじゃん。なんだか名前を見てると虐めたくなってくる。俺が愛を囁けば一体どんな表情をするんだろう。きっと泣きながら微笑むんだろうな。そこまで考えて我に帰る。


「…まあ、これに懲りずに暫く俺に片想いしとけば?結構好きだよ、名前の事」


そう言えば名前は「性格悪いなあ」と困ったように笑った。いつのまにかイライラは無くなり、俺はそのまま名前に背を向けて歩き出した。背中越しに「またね、フランク」とお別れのアイサツをされ振り向かずに軽く手を振る。

それから名前の事を考えない日は無かった。俺に振り回されて可哀想に、とオーモンド山のロッジでソファーに座りながら1人で笑う。「フランクなんか嬉しそうだね」とスージーがジュリーに話しかけていた。


あれから何度も儀式を繰り返したが名前には会えなかった。とにかく数をこなせばいつか名前に会えるだろうと、サバイバーをエンティティに捧げ続けやっと名前に会えた。くそ、何で俺がこんなに1人のサバイバーのために頑張ってんだ。

名前は俺を見ると軽く会釈して森の中へ走って行った。どこかで、俺の名前を呼びながら笑顔で走り寄ってくると期待していた俺は名前の態度に舌打ちをして儀式を進める。


名前以外のサバイバーは全員生け贄に捧げた。これで名前との時間ができた。俺はエンティティの囁きで彼女の居所を探す。最近はずっと頑張ってたし、少しくらいご褒美くれたっていいだろエンティティ様。

数分もしないうちに名前を見つけたが、どうやらハッチを探して彷徨っていたようだ。なんで俺に黙って逃げようとしてんだ。俺の事好きなんだろ。なんだよその態度。


「アイサツしないで逃げんの」

「あ、フランク…」

「何?俺の事もう好きじゃなくなったわけ」

「好きだよ」

「前と全然態度が違う」

「…キラーと仲良くしちゃ駄目って、怒られたの」

「誰に」

「えっと、ジェイク」


そういえば今回の儀式、名前がジェイクと2人でいるところをよく見かけたな。ああ、そういうことか。こいつ、ジェイクに惚れられてるのか。くそ、面白くねえ。大きく舌打ちをすると名前はビクリと肩を震わせた。


「そいつの言う事ちゃんと聞くなんて名前は良い子ちゃんだな」

「…フランク怒ってる?」

「ああ、怒ってる。なんで俺がお前に振り回されてんだよ。クソ」

「ご、ごめん。でもフランクには恋人がいるしよかったんじゃないかな。あの時はサバイバーとキラーの線引きが甘かったし、今は立ち回り方も色々わかってきたんだよ」

「ジェイクに優しく教えて貰ったってか?へー、あっそう。じゃあセックスの仕方も教えて貰ったんだ。ジェイクに」

「そ、そんな訳ないでしょ!」


名前は顔を真っ赤に染めて声を荒げる。クソ!イライラする。名前の肩を掴み壁に押し付ける。いきなり縮まった距離に名前は驚き顔を逸らそうとしたが空いてる方の手で顎を掴み無理矢理こちらへ向かせる。頬を赤く染め上げ、困ったように眉を下げる表情に思わずゾクリと肩を震わせる。


「俺以外のやつにもそんな顔見せてんだろ?とんだビッチだぜアンタ」

「…もう、年上を困らせないでよ」

「ハッ。年上ヅラすんなよウゼェな」

「焼きもち妬いちゃったんだ。可愛いね、フランク」


なんだよその余裕は。嬉しそうに微笑む名前に目を見開く。なんだよ、最初から振り回されてたのは俺の方じゃねーか。鼻までマスクをずらし上げ、名前の唇にキスをする。名前の肩を掴んでいた手を離し細い腰を強く引き寄せる。名前の白い手が俺の両頬を包み、キスをしながら小さく微笑んだ。その余裕さに腹が立ち、名前の唇を軽く舐めると、おいでと言わんばかりに口を開き俺の舌を迎え入れ絡み合う。おい、なんでこんなにキスが上手いんだよこの女。クソ、むかつく!唇が離れ、息を整える俺の頭を名前は優しく撫でた。


「ジュリーに悪い事しちゃったね」

「…知るか」


名前は俺のマスクをゆっくりと元の位置に戻しながら、また上品に笑う。


「駄目だよ。彼女は大切にしないと」

「俺の事好きなくせに何でそんな余裕なんだよ」

「…私はね、好きな人の傍にいれるなら2番目でも良いって思える女なの。それにフランクはもう私の事好きでしょ?」

「………なあ、それって1番目になったらどうなんの」


名前が目を見開き、そして嬉しそう微笑む。


「嬉しくて死んじゃう」


俺はたまらずマスクを放り投げ、また名前の唇にキスをする。

ああ、クソ。脳が溶けそうだ。





その後、オーモンド山のロッジにて。


「良いとこのオジョーサマだし親に反抗した事も家出の件だけだし、嘘はついてないよ」

「それにしちゃ色々手馴れすぎだろ。キスも、なんであんなに上手いんだよ」

「…まあ、親に内緒で色々やらかしてたりはしたよね。若気の至りってやつかな。オホホ」

「オホホじゃねーよ」

「よく褒められるんだよ」


そう言って名前は手を口の前に持っていき輪っかを作り、棒状のものを舐め上げる動作をする。「ビッチ」と呟き名前をソファーに押し倒すと、名前は意地悪そうに笑い俺のマスクに触れるだけのキスをした。


「…ヤりまくってたってわけ」

「だって年下の男の子って可愛いんだもの」

「お前なんか好きでもないお見合い相手と結婚しちまえばよかったんだ」

「結婚したら他の人とエッチできなくなっちゃうじゃない。まだ遊び足りないし結婚したくなーい」

「クズ女じゃねーか」

「あ、でも今はフランクとしかエッチしたくないし私たち結婚しちゃう?最高の制欲処理機だよ、毎日気持ち良くしてあげる」

「…は、」

「とりあえず、する?」

「…腰抜けても知らねえからな」




20190503

エンドゲーム実装されちゃったら残業なくなりますね!やったー!


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