「好きだよ」
そう言って私に手を伸ばしてくる彼の顔色は色素が失われているかのように白い。
あぁ
モウダメダ
絶対に思わなかった、
否
‘思いたくなかった’こと
「ねぇ、千鶴ちゃん」
彼の優しい声を必死で頭に記憶する。
忘れないように
いつでも思い出せるように
「幸せになって」
あぁ、
どうしてそんなことを言うのですかと伝えたかった。
いつものように
冗談だと笑ってください。
溢れ出す涙はとめどなく流れ続ける。
私も彼に伝えなければ
これだけは
彼に…
「わたしの心はあなたのものです」
彼は最後に笑顔のまま涙を流す。
とても綺麗な涙はやがて止まる。
最後の涙が彼の頬を伝った時、
私は彼に最期の口付けを交わした。
end