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嗚呼‥懐かしいなぁ、なんて。


夕方。
私はゆっくりと鷹斗の家に向かって歩いていた。片手にはケーキの入った袋を持って。
こんなとき思い出すのは付き合い始めた頃のこと。
今まで当たり前だった行動も言葉も、全てが違ってみえた。あの頃に比べたら今の鷹斗は、仕事も充実してきて忙しいみたいで。あんまり会えなくなってしまったから私としては少し寂しかったりするのだけれど、
(でも、)





「撫子!」
目の前には大好きな昔と変わらない笑顔の鷹斗がいた。

「寒かったでしょ」
「‥待ってなくて良かったのに」
「大丈夫だよ。それに、昔はこうやってよく歩いたよね?」

隣を歩きながら、鷹斗は言った。私はちょっと驚いてしまって、じいと彼を見つめる。あなたもそんなこと考えてたの?なんて。鷹斗は不思議そうな顔してそれから。
くすくす笑ったあなたが、きらきら光る空が、あの日とおんなじで。変わらなくて。

(なんだ。こんなに近くにいたんだ)

触れようと手を伸ばせば、差し出してくれた手はあったかくて、何だか泣きそうになった。
だけど、見上げた鷹斗の表情は微笑んでいて。






「‥じゃあ手、繋いでもいい?」


たぶん、あの頃とおんなじくらい照れてるんだろうな。



(なんて、愛しいんだろう)





これからも私達は変わっていくんだろう。
だけどね、昔のあなたも未来のあなたも同じぐらい愛おしい。
だから、我が儘を言うなら、一緒に変わっていこう。



end
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