注意
・ヒロさんのGH/僕らの の登場人物トウマさんと我が子・千百合のifCP
・トウマさんの立ち位置が高坂家の千百合のお目付役兼家事手伝い
・ゲスで元凶なあの人はinしてない(かもしれないししているかもしれない)
・CPとか言いつつ恋愛感情は無し。オチとかヤマとかないよー!!









「どうしましょう」

千百合は寂れたタバコ屋で一人、途方にくれていた。冬でも陽気な気候で久しぶりにお日様を拝めてなんだか嬉しくなり一人フラフラと散歩に来たら……いつの間にか遠くまで来たようで迷子になってしまった。
千百合は無表情ながらに「どうしましょう」と繰り返す。家に財布も携帯も置いてきてしまった。家人に迎え来てとも、呼べない。
追い打ちをかけるように、ぐー、とお腹が鳴った。
千百合は能面のような顔をうっすら赤く染めながら俯く。

「……このまま家に帰れなかったらどうしよう」

そう呟いたら本当のことになりそうで、千百合は小さく唇を噛む。そのとき、「途方に暮れてどうかしましたか?」と柔らかい声がかけられた。

「……!」

聞き慣れた声に千百合はパッと顔を上げた。
茶の髪に灰色の瞳。日本離れした容姿の燕尾服に長めのコートを合わせた青年がそこにいた。

「トウマさん」
「お迎えにあがりましたよ、千百合お嬢様」

そう言って青年……トウマは、にっこりと笑った。



千百合は表情筋がぴくりとも動かない顔で目を瞬きトウマを見上げる。

「どうしてここがわかったの」
「どうしてでしょうね? それにしてもちーさまー? 高校生にもなって迷子ですかー?」

さきほどのうやうやしい態度を崩し気安い態度で、ププ、とからかうように笑われ千百合はムッとする。トウマはこういう人だ。人をからかうことが大好きな高坂家の千百合のお目付役兼家事手伝い。
彼女は「迷子になりたくて迷子になったわけじゃないわ」と言おうしたが事実迷子になっていたわけで反論は出来ず、トウマを睨むだけに留まった。

「そんなに睨まないでください。あぁ、服にGPS付けた方がよろしいですかねー? 携帯もお忘れになりますし」
「……いじわる……いじわる」
「いじわるなんて申しておりません。誘拐されたらどうするのですか。あなたさまに何かありましたら、わたしが万里さまに解雇され……ゲフンゲフン」
「……」

自分の保身を心配するトウマに千百合は絶対零度の視線を向ける。

「嘘です嘘です冗談ですよー! 千百合お嬢様に何かあったかと心配で心配で……」
「本音は?」
「こたつでごろごろしたいのに手間かけさry……いいえ、違うんです!」
「もういい。帰る」

クルッとトウマから踵を返して帰ろうとするがすぐに帰り道がわからないことを思い出して立ち止まった。

「……そっちは屋敷とは逆方向ですよー」

千百合は恥ずかしさから顔を真っ赤にさせてぷるぷる震える。トウマは千百合に近付いて、膝を屈めて顔を覗きこみ「ふふ、もうからかいませんから。 一緒に帰りましょう」と提案する。
千百合はぽそっと「……紅茶、おやつ、DVDみる」とむすっとしながら言う。

「ええ、とっときの紅茶といただきもののケーキがあります。ちーさまの好きなお笑いDVDを一緒にみながら、食べましょう?」

だから、機嫌を治してくださいな。
トウマは困ったような顔をしながらも堪えきれない笑いをこぼす。こうしてからかうのも、千百合はきっと許してくれるだろう、そう知っているからだ。
千百合は、つーんとしたポーズをとりながら「ケーキ……たべる」とかすかに頬を緩める。お腹が空いていたし、食べものに釣られたとかそんなわけじゃない。

「ふふ、じゃあ帰りましょう。ちなみに、屋敷は通りを挟んだ向こうです」
「え」
「ここは超近所です」

ププ、と笑うトウマに千百合はまた顔を赤くし彼の腕を叩いて、一人歩いていく。

「あ、ちーさま待ってくださいよー!! すみません、謝りますからー!」
「トウマさんなんてしらない。いじわる。バカ。アホ。あんぽんたん。馬にけられちゃえ」
「そんな言葉どこで覚えたんですかー!? アレですか、最近やっと友達からスタートしたヤマヅキクンのせいですかー! おのれ、わたしが手塩をかけて育てたちーさまに反抗的な言葉を……!」
「トウマさんうるさい。山月くんはなくて関係ない。あとトウマさんに育てて貰った覚えはないわ。本当もうしらない」
「あ、ちゆさまー!ちーさまー!本当すみません!そんなに怒らないでくださーい!」

トウマはプンスカ怒る千百合を微笑ましく思いながら、あとを追う。
さらに夕食はちーさまの好きなものを作らなくてはいけないな、と思いながら。






∴ご機嫌取りはお手のもの
 
 
 
 



20141124 騎亜羅
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