「カヤ、なんだか肌ツルツルね」
「ふふふ、昨日は先輩とデートだったのだ」
「……リア充乙!! もー! なんでこんな変態が彼氏持ちなんだよー!」


友人の一人……加藤 真知(かとう まち)にキィィッと睨まれ「……うん、御褒美にしか思えん」とコメントする。もちろん、興奮までとはいかない。私は先輩という相手が出来、誰でも良いビッチから成長したのだ!


たぶんな!


「ガチで引くわ」
「ふふふ、昨日も熱い夜だったのだ」
「ノロケんな死ね」
「マチ……そんな、罵るな……っ反応するだろうが!先輩しか愛さないと決めてるのに!」
「キモい!ウザい!見てこの鳥肌!華夜の事情なんて知らねえよ!!!!」


真知の全力の突っ込みを受け、今日も平和だなぁと思う。さっき別れたばかりだけれど、先輩に会いたいなとも思った。


「どう熱かったか聞きたいわ、わたし」
「そうだな、ユミ!まずはぜん――」
「ここ学校!イッツスクール!!!!今は朝!モーニングナウ、オッケー!?」


もう一人の友人、富良野 弓(ふらの ゆみ)がにっこりと笑って聞いて来たから懇切丁寧に教えようとしたら、真知に止められた。


「……あたし、アンタ達と友達辞めたい……」
「どうして?」
「どうしてだ?」
「色欲魔二人と友達なんて嫌だろ、もう!」


真知の叫びに私と弓は顔を見合わせにっこりと笑った。


「その時が来たら、色々教えるぞ?」
「そうそう。マチの処女、もらってあげても良いのよ?」
「……っるせー!!処女だのなんだの朝っぱら言うなあああああ!!!!」


マチが切れても私たち二人は何のその。マチったら純情ねー、そうだなー、と言い合う。


わたしの友人・富良野弓は、童顔な容姿とは裏腹に私と肩を並べる色欲魔である。わたしと同じく両刀。類は友を呼ぶ。その道では童貞・処女食いの幼女と言われた女――見た目は可愛らしい少女だが、それは毒であると言っておこう……引っ掛かったら最後だ、とも。そして巨乳である。巨乳。


「繰り返さないで良いのよ、カヤ。事実だけども」
「今度揉ませてくれ」
「先輩に操を立てるんじゃないの?」
「……そうだった」


浮気しそうになる立派な乳である。じゅる。


「クソヤロウ……バカにしやがって……」


もう一人、加藤真知は、ショートカットのスポーツ少女である。ひょんなことから知り合い、大変高いツッコミで私と弓を魅りょ「してねーよ!」……おっと本人がお怒りのようだ。下に免疫が無く、私と弓にとっては可愛い友人だ。そして貧乳だ。揉んで大きくしたい貧にゅ「胸のことは言うな!!!!」


可愛いちっぱいだ。


「はぁぁ……カヤクソムカつく……つーかさ、先輩の知り合い紹介してよ……さすがに……免疫が無いのはヤバイ気がする……」
「ふむ。そうだな、社会に出た時に困る」


急にシュン、としたマチは少し男性恐怖症だ。今の今まで女子校で育ったマチは男に免疫が無く、それを少し気に病んでいる。ボーイッシュな容姿も要因の一つ、だろうか。


「そんな男なんて、怖くないわよー。ちょっと甘えたらコロッと……ホテルにゴー!ってなるだから」
「ならねえよ!!?早すぎるわ、ユミ!!!!」


そうかしら〜? と言うユミに対し「マチにはハードルが高いだろ」と指摘し、マチに教えてやる。


「マチ、まずはキスからだ!」
「カヤ、ちげえええええええええ!!!!」


全力で却下された。


「き、キスよりも! 普通にしゃべれなきゃダメだろ!」
「身体を繋ぐのに……言葉なんて要らないわ!」
「まだそれは良いから!!」


弓が意地悪く「いいえ、身体を繋げれば男とも普通に……」なんて言い出すから真知は耳を塞ぎ出した。


「ほーら、あんまりいじめるな」
「ふはっ、だってマチ、可愛くて」
「……しね……マジで友達辞める……」


真知に真っ赤な顔で恨みがましい目で見られても、弓はにこにこと笑う。からかうのが楽しくて仕方ないという表情にわたしは肩をすくめ、「そろそろ授業じゃないか」と救いの手を差し伸べる。


「そっ、そうだ!授業!授業!」
「カヤ……まあいいわ」


わたしは友人をいじめる趣味はない。むしろいじめられた……いいや、なんでもない。三人揃って立ち上がり、三つ編みにしても長い髪が揺れた。



前を歩いていた弓が少し不思議そうな顔をして振り替える。



「カヤ……あなた、シャンプー変えた?」
「良いや?」
「そう……ふはっ、お熱いことで」
「……?」


意味が分からず、首を傾げる。


真知に「どういう意味だと思う?」と聞くと「カヤのバーカ!」と真っ赤な顔で言われ、さらに首を傾げることになった。








∴残り香
「お熱い? 何が熱い……?」
「クソリア充……っ色欲魔……貞操ちゃんと守れ……」
「そんなのカヤが数時間一緒なら、逃げられないし」


9月26日 騎亜羅
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