短編 | ナノ

 10歳



おれにはおとうとがいるみたい。
「みたい」っていうのは、家の使用人たちがそう言うから。
でもおれには見えないの。使用人たちは「そこにいますよ」と言うけど、いない。
「どこにいるの」
「いま、ここに」
「いないよ?」
おとうと、いない。おれには見えないの。
おいしゃさまは「おとうさんもおかあさんもいなくなったことにより、こころにふかがかかり、おとうとさんが見えなくなったのでしょう」ってむずかしいことをいってた。
とにかく、おれにはおとうとがいるみたい。
おれには見えないおとうと。



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